◆SH4061◆国際契約法務の要点――FIDICを題材として 第64回 第11章・紛争の予防及び解決(5)――仲裁(2) 大本俊彦/関戸 麦/高橋茜莉(2022/07/14)

国際契約法務の要点――FIDICを題材として

第64回 第11章・紛争の予防及び解決(5)――仲裁(2)

京都大学特命教授 大 本 俊 彦

森・濱田松本法律事務所     
弁護士 関 戸   麦

弁護士 高 橋 茜 莉

 

第64回 第11章・紛争の予防及び解決(5)――仲裁(2)

3 建設紛争の特色と仲裁への影響

 民事紛争の中でも、建設分野における規模の大きい紛争が「建設紛争」あるいは「大規模プロジェクト紛争」として類型化され、他の紛争と区別されるのは、それに足りるだけの特色を備えているからであろう。もちろん、建設紛争と一口に言っても、具体的に問題となる論点は事案ごとに異なり、ケースバイケースの判断が求められる点においては他の紛争と変わりはない。しかしながら、多くの建設紛争に共通して見られる特色があることは、先例を通して広く認識されてきている。本稿では、建設紛争の主な特色と、それが仲裁にどのような影響を及ぼし得ると一般に考えられているかを紹介する。

⑴ 高度の技術性

 建設紛争の最も分かりやすい特色は、高度に技術的で複雑な内容となることが多い点である。たとえば、Contractorによる工期延長や工事の変更に関する請求がEmployer側に認められず、紛争になったとき、場合によっては数十件以上の請求について仲裁廷が判断を下さなければならないことがある。そのような場合、各請求について事実関係を正確に把握し、論点を洗い出し、請求権の存否及び請求額の妥当性を判断することは容易ではない。したがって、これを可能にするような手続的工夫が必要となる。一例としては、当事者が提出する通常の主張書面に加え、各請求の要点をまとめた表(Scott Scheduleなどと呼ばれるが、詳しくは後の回で取り扱う)を作成して手続を管理することが挙げられる。

 また、技術的な論点に関する当事者の主張立証や仲裁廷の判断を助けるため、多くの場合、専門家による分析が必要となる。専門家についても、詳しくは後の回で解説する。

続きはこちらから

バックナンバーはこちら

 

(おおもと・としひこ)

国立大学法人京都大学経営管理大学院 特命教授
昭和49年(1974年)京都大学工学研究科土木工学専攻(修士課程)を修了後、大成建設(株)に入社。主に国際工事を担当し、工事管理を経て契約管理・紛争解決にかかわる。昭和64年~平成3年(1989年~1991年)、ロンドン大学で「建設法と仲裁」の修士課程を修める。その後英国仲裁人協会より公認仲裁士(フェロー:FCIArb)の資格を得る。平成12年(2000年)、大成建設を退社し、「大本俊彦 建設プロジェクト・コンサルタント」を開業。平成14年(2002年)、京都大学博士(工学)を取得。平成18年4月(2006年4月)、京都大学経営管理大学院教授となる。FIDIC プレジデント・リストに掲載されているアジアで唯一のディスピュート・ボード(DB)アジュディケーターとして数々のプロジェクトのDBメンバーを務めている。また、英国土木学会(ICE)のフェロー・メンバーでもある。そのほか様々な国際仲裁センターの仲裁人パネリストとして仲裁人を務め、シンガポール調停センター、京都国際調停センターの調停人パネリストである。

 

(せきど・むぎ)

森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士
訴訟、仲裁等の紛争解決の分野において、Chambers、Legal 500等の受賞歴多数。『わかりやすい国際仲裁の実務』(商事法務、2019年)、「パネルディスカッション 争点整理は、口頭議論で活性化するか」(判例タイムズNo.1453、2018年)、『わかりやすい米国民事訴訟の実務』(商事法務、2018年)等、国内外の紛争解決に関する執筆、講演歴多数。
1996年東京大学法学部卒業、 1998年弁護士登録(第二東京弁護士会)、森綜合法律事務所(現在森・濱田松本法律事務所)入所、2004年シカゴ大学ロースクール(LL.M)卒業、 ヒューストン市Fulbright & Jaworski法律事務所にて執務、2005年ニュ-ヨーク州弁護士登録、2007年東京地方裁判所民事訴訟の運営に関する懇談会委員(~2019年)、2020年一般社団法人日本国際紛争解決センター アドバイザリーボード委員(~現在)、2021年日本商事仲裁協会・Japan Commercial Arbitration Journal 編集委員会委員(~現在)等。

 

(たかはし・せり)

森・濱田松本法律事務所外国弁護士
国際仲裁をはじめとした国際紛争解決を専門とする。大手外資系法律事務所の東京、ドバイ及び香港オフィスでの勤務経験を有し、建設紛争、合弁事業に関する紛争等、様々な分野における国際商事仲裁や専門家による紛争解決手続などに携わってきた。2020年より、森・濱田松本法律事務所の国際紛争解決チームに属し、シンガポールオフィスにおいて勤務中。
2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業、2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2017年コロンビア大学ロースクール(LL.M)卒業、2018年ニューヨーク州弁護士登録。

 




メールで情報をお届けします
(毎週火曜日・金曜日)