◆SH4020◆著者に聞く! 伊東祐介弁護士『新規株式上場(IPO)の実務と理論』 伊東祐介/西田章(2022/06/08)

著者に聞く! 伊東祐介弁護士『新規株式上場(IPO)の実務と理論』

弁護士 伊 東 祐 介

(聞き手) 西 田   章

 

 商事法務から、本年4月に、『新規株式上場(IPO)の実務と理論』(伊東祐介弁護士著)が出版されました。IPOに関しては、これまでにも監査法人や証券会社によって書かれた書籍は数多く出版されて来ましたが、法律の専門家である弁護士の執筆に係る書籍を見かけることは多くありませんでした。これは、日本のIPO実務について、弁護士の役割が限定的または間接的であり、その全体像を理解している弁護士が少なかったことに起因しているように思われます。『新規株式上場(IPO)の実務と理論』の著者である伊東祐介弁護士は、日本証券取引所自主規制法人の上場審査部に勤務されて、そのご経験は「およそ400以上の上場申請会社及び上場会社」への関与にも及んでいます(同書「はしがき」参照)。

 現在、商事法務のBUSINESS LAW SCHOOLでは、「新規株式上場(IPO)の実務(基礎編・実務編)」という題名で伊東弁護士のWEBセミナーが配信されていますが、書籍のベースとなっている証券取引所における勤務経験がどのようなものであったのかについてお伺いするため、同セミナーの収録を終えた伊東弁護士にインタビューをさせていただきました。

 

 

「新規株式上場(IPO)の実務と理論」は、東証での実際の勤務経験に基づいたアドバイスが盛り込まれており、実務家にとって、参照する価値の高い本だと思いました。他の分野では、「元金融庁検査官が語る」とか「元国税庁調査官が語る」みたいな刺激的なタイトルのセミナーや著書が散見されますが、それらに比べると、穏やかな体裁ですね。
自分自身が「こういう本があると便利だろうな」と思ったことが執筆のきっかけでしたので、地味な体裁になってしまったかもしれません。もっと刺激的なタイトルを付けた方がよかったですかね(笑)。
いえいえ、派手なタイトルを付けると、所属していた組織の現役のメンバーに嫌われるのがオチですよ。今回のご著書の出版について、東証の方々からのリアクションはあったのでしょうか。内容的には、「上場の抜け道教えます」みたいな本ではなく、むしろ、正面から堂々と上場承認を得るためのアドバイスが書かれているので、役員から怒られるようなものではないと思いますが。
出版後、東証の役員や管理職の方々、自主規制法人の理事の方々へのご挨拶の際に、本を献本して「間違った記述があれば、第二版では修正しますから、なんでもご指摘下さい」とお願いして回っています。今のところ、まだお叱りは受けておらず(笑)、むしろ「東証の実務を知っている専門家が外に出て、関係者の指導に回ってくれるのはありがたい」という励ましの言葉を頂けています。
伊東さんはどのくらい東証で勤務されたのでしょうか。弁護士業務に復帰なされたのは、2021年7月からですよね。
はい、そのとおりです。2017年1月から2021年6月末までの4年半、東京証券取引所に在籍していたことになります。前半は東京証券取引所の上場部で適時開示制度の構築・運用業務を、後半は東証からの出向という形で日本取引所自主規制法人の上場審査部に在籍して上場審査業務に従事しておりました。
上場部と上場審査部の2つの部署で主に勤務されていたのですね。東証が刊行しているガイドブックで言えば、上場部が「会社情報適時開示ガイドブック」に関わる分野で、上場審査部が「新規上場ガイドブック」に関わる分野ですかね。伊東さんの本に即したら、最初の上場部での勤務経験が、第4章「上場会社の責務」に反映されており、次の上場審査部での勤務経験が、第1章から第3章の上場審査に反映されている、という感じですね。
はい、そのとおりです。自分自身の経験としても、まず、上場部において、上場会社がなすべき開示のあり方を、たくさんの実例を通じて理解した上で、次に、上場審査部に転じて、上場準備会社に対して、そのような責務を課すに相応しい実態があるかどうかを審査する側に回る、という順序で経験できたことは、有意義でした。

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(いとう・ゆうすけ)

鳥飼総合法律事務所カウンセルパートナー弁護士。
主な取扱分野はIPO、IR、M&A、スタートアップ法務、訴訟全般。
鳥飼総合法律事務所入所後、株式会社日本政策投資銀行企業戦略部(M&Aアドバイザリー業務)、株式会社東京証券取引所上場部(適時開示制度構築・運用業務)、日本取引所自主規制法人上場審査部(上場審査業務)での勤務を経て、現職。第二東京弁護士会所属、66期。中央大学法科大学院修了。
著書:『新規株式上場の実務と理論』(商事法務、2022)、『経営に活かす株主総会の実務』(新日本法規、2019)(共著)、『経済刑事裁判例に学ぶ不正予防・対応策』(経済法令研究会、2015)(共著)
論文:「適時開示制度の概要(前編・後編)」月刊監査役673、675号(2017)、「IPO(新規株式上場)審査の概要と留意点」月刊監査役709号(2020)、「近時のIPO(新規株式上場)審査と監査役に求められる役割」月刊監査役722号(2021)

 

(にしだ・あきら)

✉ akira@nishida.me

1972年東京生まれ。1991年東京都立西高等学校卒業・早稲田大学法学部入学、1994年司法試験合格、1995年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程(研究者養成コース)入学、1997年同修士課程修了・司法研修所入所(第51期)。
1999年長島・大野法律事務所(現在の長島・大野・常松法律事務所)入所、2002年経済産業省(経済産業政策局産業組織課 課長補佐)へ出向、2004年日本銀行(金融市場局・決済機構局 法務主幹)へ出向。
2006年長島・大野・常松法律事務所を退所し、西田法律事務所を設立、2007年有料職業紹介事業の許可を受け、西田法務研究所を設立。現在西田法律事務所・西田法務研究所代表。
著書:『新・弁護士の就職と転職――キャリアガイダンス72講』(商事法務、2020)、『弁護士の就職と転職』(商事法務、2007)




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