◆SH4008◆台湾:台湾の営業秘密法(1) 德地屋圭治(2022/05/30)

台湾:台湾の営業秘密法(1)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 德地屋 圭 治

 

 台湾においては、企業の営業秘密の保護のため、営業秘密法が制定されているが、最近の事例等を踏まえ、台湾に進出する日系企業が留意すべき点について、以下に紹介する。

 

1 営業秘密法による営業秘密保護

(1) 営業秘密の定義

 営業秘密法においては、以下のとおり、同法の対象となる営業秘密が定義されている(第1条)。

 本法でいう営業秘密とは、方法、技術、工程、公式、プログラム、設計又はその他の生産、販売又は経営に用いることができる情報であって、以下の要件に該当するものをいう。

  1. ①(非公知性)その種の情報に関連する人が一般的に知っているものでないこと
  2. ②(経済価値)その秘密性により、実際の又は潜在的な経済的価値を有すること
  3. ③(秘密管理性)所有者が合理的な秘密保持措置を採っていること

 これらの営業秘密の定義に該当するための要件は、日本の不正競争防止法上の営業秘密の要件と比べ、若干の違いはあるが、概ね同趣旨のものである。このうち、①非公知性及び③秘密管理性については、その該当性が問題になることが少なくないので、これらについて、以下に若干の問題点等を紹介する。

  1.   ① 非公知性について
  2.    台湾においては、営業秘密法上の営業秘密の要件の一つである①非公知性への該当性の検討に当たっては、商業性営業秘密と技術性営業秘密とに分けて論じられている。商業性営業秘密とは、顧客名簿、販売価格、原価情報、コスト分析などが含まれ、技術性営業秘密には、特定の産業における研究開発や技術創出に関連する方法や技術、工程、公式などが含まれるとされる(台湾経済部知的財産局2019「営業秘密保護実務の手引2.0」(「手引」)5頁)。

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(とくじや・けいじ)

長島・大野・常松法律事務所パートナー、上海オフィス一般代表。2003年東京大学法学部卒業。第二東京弁護士会所属。2011年University of California, Berkeley, School of Law卒業(LL.M.)、2013年Peking University Law School卒業(LL.M.)。豊富な海外法務の経験を有する(Zhong Lun、Lee and Liで研修)。
M&Aを中心に国内企業法務分野を取り扱うとともに、海外(中国大陸・台湾を含む)の企業の買収、海外企業との紛争解決、現地日系企業に関するコンプライアンス、危機管理・不祥事対応等企業法務全般に関して日本企業に助言を行っている。

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