◆SH3972◆国際契約法務の要点――FIDICを題材として 第52回 第11章・紛争の予防及び解決(2)――当事者による相手方当事者への請求(1) 大本俊彦/関戸 麦/高橋茜莉(2022/04/14)

国際契約法務の要点――FIDICを題材として

第52回 第11章・紛争の予防及び解決(2)――当事者による相手方当事者への請求(1)

京都大学特命教授 大 本 俊 彦

森・濱田松本法律事務所     
弁護士 関 戸   麦

弁護士 高 橋 茜 莉

 

第52回 第11章・紛争の予防及び解決(2)――当事者による相手方当事者への請求(1)

1 はじめに

 建設契約の当事者であるEmployerとContractorの最優先事項は、第一義的にはプロジェクトを完工に至らしめることである。しかしながら、相対当事者という関係上、両者の利害は完全には一致せず、自らの権利を守るため相手方に何らかの請求を行わなければならない場面も多い。代表的には、ContractorがEmployerに対して工期延長を請求する場面や、EmployerがContractorに対してDelay Damagesの支払いを請求する場面が考えられる。

 当事者の権利保護のためには、請求を行う機会を保障することが重要である一方、かかる請求が相手方当事者にとって不意打ちとなるのは不合理と言えよう。ゆえに、契約において両当事者の利益のバランスを取る必要が生じるところ、FIDICは請求を行うための詳細な要件を定めることでそのバランスを取ろうとしたものと解される。

 当事者が請求を行うための要件は、個別の条項に定められていることもある(たとえば工期延長については8.5項、Delay Damagesについては8.8項など)。特に、工期延長における遅延の理由などの実体的要件は、当該請求に特有のものであるため、個別の条項で取り扱うのに適している。一方、請求に際して踏まなければならない手順、すなわち手続的要件の大部分は、様々な種類の請求に共通しうるため、包括的な条項で定めることが可能であり、また便宜にかなうと考えられる。2017年版のFIDIC Rainbow Suiteにおいては、20項がこの包括的な条項に当たる(もっとも、他の条項にも手続的要件が含まれていることはあり、当事者は該当する手続要件のすべてを満たす必要があることは、20.2.7項からも見て取れる)。そこで、今回から数回にわたり、20項を読み解くことを試みる。

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(おおもと・としひこ)

国立大学法人京都大学経営管理大学院 特命教授
昭和49年(1974年)京都大学工学研究科土木工学専攻(修士課程)を修了後、大成建設(株)に入社。主に国際工事を担当し、工事管理を経て契約管理・紛争解決にかかわる。昭和64年~平成3年(1989年~1991年)、ロンドン大学で「建設法と仲裁」の修士課程を修める。その後英国仲裁人協会より公認仲裁士(フェロー:FCIArb)の資格を得る。平成12年(2000年)、大成建設を退社し、「大本俊彦 建設プロジェクト・コンサルタント」を開業。平成14年(2002年)、京都大学博士(工学)を取得。平成18年4月(2006年4月)、京都大学経営管理大学院教授となる。FIDIC プレジデント・リストに掲載されているアジアで唯一のディスピュート・ボード(DB)アジュディケーターとして数々のプロジェクトのDBメンバーを務めている。また、英国土木学会(ICE)のフェロー・メンバーでもある。そのほか様々な国際仲裁センターの仲裁人パネリストとして仲裁人を務め、シンガポール調停センター、京都国際調停センターの調停人パネリストである。

 

(せきど・むぎ)

森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士
訴訟、仲裁等の紛争解決の分野において、Chambers、Legal 500等の受賞歴多数。『わかりやすい国際仲裁の実務』(商事法務、2019年)、「パネルディスカッション 争点整理は、口頭議論で活性化するか」(判例タイムズNo.1453、2018年)、『わかりやすい米国民事訴訟の実務』(商事法務、2018年)等、国内外の紛争解決に関する執筆、講演歴多数。
1996年東京大学法学部卒業、 1998年弁護士登録(第二東京弁護士会)、森綜合法律事務所(現在森・濱田松本法律事務所)入所、2004年シカゴ大学ロースクール(LL.M)卒業、 ヒューストン市Fulbright & Jaworski法律事務所にて執務、2005年ニュ-ヨーク州弁護士登録、2007年東京地方裁判所民事訴訟の運営に関する懇談会委員(~2019年)、2020年一般社団法人日本国際紛争解決センター アドバイザリーボード委員(~現在)、2021年日本商事仲裁協会・Japan Commercial Arbitration Journal 編集委員会委員(~現在)等。

 

(たかはし・せり)

森・濱田松本法律事務所外国弁護士
国際仲裁をはじめとした国際紛争解決を専門とする。大手外資系法律事務所の東京、ドバイ及び香港オフィスでの勤務経験を有し、建設紛争、合弁事業に関する紛争等、様々な分野における国際商事仲裁や専門家による紛争解決手続などに携わってきた。2020年より、森・濱田松本法律事務所の国際紛争解決チームに属し、シンガポールオフィスにおいて勤務中。
2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業、2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2017年コロンビア大学ロースクール(LL.M)卒業、2018年ニューヨーク州弁護士登録。




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