◆SH3965◆国際契約法務の要点――FIDICを題材として 第51回 第11章・紛争の予防及び解決(1)――総論(4) 大本俊彦/関戸 麦/高橋茜莉(2022/04/07)

国際契約法務の要点――FIDICを題材として

第51回 第11章・紛争の予防及び解決(1)――総論(4)

京都大学特命教授 大 本 俊 彦

森・濱田松本法律事務所     
弁護士 関 戸   麦

弁護士 高 橋 茜 莉

 

第51回 第11章・紛争の予防及び解決(1)――総論(4)

7 その他留意点

 法的紛争に対峙する上での留意点として、直ぐに想起されるものとしては、以下が挙げられる。

 

⑴ トータルの損害を減らす

 第43回において、損害の回避が不履行リスクの回避、換言すれば履行の確保につながると述べた。この観点は、法的紛争が発生した後、その効率的解決をはかるという場面にも当てはまる。すなわち、損害が生じ、これをめぐる法的紛争が発生したとしても、トータルの損害が少なければ少ないほど、効率的解決がはかりやすい。ここでいうトータルの損害というのは、自らに生じる損害と相手方に生じる損害の、総和である。

 法的紛争の解決には、一般的には次の4段階があり、下の段階に進めば進むほど、紛争解決のコスト(労力、時間、費用等)は増加する傾向にある。

  1. ① 当事者間での和解交渉
  2. ② 代理人弁護士間の和解交渉
  3. ③ 調停人等の第三者を介しての和解交渉手続
  4. ④ 訴訟、仲裁等の第三者の強制力ある判断を求める手続

 トータルの損害が少なければ少ないほど、和解実現のために各当事者に求められる譲歩の絶対量が少なくて済み、上の段階で和解がまとまる可能性が高くなる。他方、トータルの損害が大きくなるほど、その絶対量の多さ故に和解実現のための譲歩が困難となり、④の手続において、第三者の判断を求めざるを得なくなる可能性が高くなる。

 トータルの損害を減らすためには、自らの損害に着目するだけではなく、相手の損害に着目する必要がある。また、トータルの損害を減らすタイミングは、保険金等による事後的な損害回復を除けば、基本的に損害が拡大している最中という、初期の段階である。この点は、法的紛争の解決において初期対応が重要となる理由の一つである。

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(おおもと・としひこ)

国立大学法人京都大学経営管理大学院 特命教授
昭和49年(1974年)京都大学工学研究科土木工学専攻(修士課程)を修了後、大成建設(株)に入社。主に国際工事を担当し、工事管理を経て契約管理・紛争解決にかかわる。昭和64年~平成3年(1989年~1991年)、ロンドン大学で「建設法と仲裁」の修士課程を修める。その後英国仲裁人協会より公認仲裁士(フェロー:FCIArb)の資格を得る。平成12年(2000年)、大成建設を退社し、「大本俊彦 建設プロジェクト・コンサルタント」を開業。平成14年(2002年)、京都大学博士(工学)を取得。平成18年4月(2006年4月)、京都大学経営管理大学院教授となる。FIDIC プレジデント・リストに掲載されているアジアで唯一のディスピュート・ボード(DB)アジュディケーターとして数々のプロジェクトのDBメンバーを務めている。また、英国土木学会(ICE)のフェロー・メンバーでもある。そのほか様々な国際仲裁センターの仲裁人パネリストとして仲裁人を務め、シンガポール調停センター、京都国際調停センターの調停人パネリストである。

 

(せきど・むぎ)

森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士
訴訟、仲裁等の紛争解決の分野において、Chambers、Legal 500等の受賞歴多数。『わかりやすい国際仲裁の実務』(商事法務、2019年)、「パネルディスカッション 争点整理は、口頭議論で活性化するか」(判例タイムズNo.1453、2018年)、『わかりやすい米国民事訴訟の実務』(商事法務、2018年)等、国内外の紛争解決に関する執筆、講演歴多数。
1996年東京大学法学部卒業、 1998年弁護士登録(第二東京弁護士会)、森綜合法律事務所(現在森・濱田松本法律事務所)入所、2004年シカゴ大学ロースクール(LL.M)卒業、 ヒューストン市Fulbright & Jaworski法律事務所にて執務、2005年ニュ-ヨーク州弁護士登録、2007年東京地方裁判所民事訴訟の運営に関する懇談会委員(~2019年)、2020年一般社団法人日本国際紛争解決センター アドバイザリーボード委員(~現在)、2021年日本商事仲裁協会・Japan Commercial Arbitration Journal 編集委員会委員(~現在)等。

 

(たかはし・せり)

森・濱田松本法律事務所外国弁護士
国際仲裁をはじめとした国際紛争解決を専門とする。大手外資系法律事務所の東京、ドバイ及び香港オフィスでの勤務経験を有し、建設紛争、合弁事業に関する紛争等、様々な分野における国際商事仲裁や専門家による紛争解決手続などに携わってきた。2020年より、森・濱田松本法律事務所の国際紛争解決チームに属し、シンガポールオフィスにおいて勤務中。
2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業、2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2017年コロンビア大学ロースクール(LL.M)卒業、2018年ニューヨーク州弁護士登録。




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