◆SH3904◆国際契約法務の要点――FIDICを題材として 第43回 第9章・履行の確保(1) 大本俊彦/関戸 麦/高橋茜莉(2022/02/10)

国際契約法務の要点――FIDICを題材として

第43回 第9章・履行の確保(1)

京都大学特命教授 大 本 俊 彦

森・濱田松本法律事務所     
弁護士 関 戸   麦

弁護士 高 橋 茜 莉

 

第43回 第9章・履行の確保(1)

1 不履行リスクの存在

 契約を締結することによって、当事者はそれぞれ権利を取得し、義務を負うことになる。ただし、この義務は必ず履行されるとは限らない。

 第2回で述べたとおり、契約については幹となる権利義務を意識することが有用であるところ、Employerの幹となる権利(Contractorの幹となる義務)は、工事等の実施である。この点、工事等が完成しない、あるいは不十分な形でしか行われない可能性は、一般論として否定することができない。これは、Employerから見ればリスクである。また、仮にこの義務が最終的には履行されるとしても、時期的に遅延する可能性もある。第24回で述べたとおり、大規模なインフラ・建設工事契約において時間は極めて大きな経済的意味を持っており、この遅延の可能性も、Employerにとってリスクである。

 一方、Contractorの幹となる権利(Employerの幹となる義務)は、代金の支払である。これが支払われない可能性、あるいは支払われるにしても遅延する可能性は、一般論として否定できない。これは、Contractorにとってのリスクである。

 このように、契約の不履行リスクは存在するのであり、特に、大規模なインフラ・建設工事契約においては、この不履行リスクの経済的なインパクトは甚大となりうる。したがって、不履行リスクにいかに対応するかは、重要な意味を持つ。

 

2 不履行リスク対応の視点

 不履行リスクへの対応方法、換言すれば、履行を確保するための方法としては、契約に関する一般論として、次の4つの視点が考えられる。

 

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(おおもと・としひこ)

国立大学法人京都大学経営管理大学院 特命教授
昭和49年(1974年)京都大学工学研究科土木工学専攻(修士課程)を修了後、大成建設(株)に入社。主に国際工事を担当し、工事管理を経て契約管理・紛争解決にかかわる。昭和64年~平成3年(1989年~1991年)、ロンドン大学で「建設法と仲裁」の修士課程を修める。その後英国仲裁人協会より公認仲裁士(フェロー:FCIArb)の資格を得る。平成12年(2000年)、大成建設を退社し、「大本俊彦 建設プロジェクト・コンサルタント」を開業。平成14年(2002年)、京都大学博士(工学)を取得。平成18年4月(2006年4月)、京都大学経営管理大学院教授となる。FIDIC プレジデント・リストに掲載されているアジアで唯一のディスピュート・ボード(DB)アジュディケーターとして数々のプロジェクトのDBメンバーを務めている。また、英国土木学会(ICE)のフェロー・メンバーでもある。そのほか様々な国際仲裁センターの仲裁人パネリストとして仲裁人を務め、シンガポール調停センター、京都国際調停センターの調停人パネリストである。

 

(せきど・むぎ)

森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士
訴訟、仲裁等の紛争解決の分野において、Chambers、Legal 500等の受賞歴多数。『わかりやすい国際仲裁の実務』(商事法務、2019年)、「パネルディスカッション 争点整理は、口頭議論で活性化するか」(判例タイムズNo.1453、2018年)、『わかりやすい米国民事訴訟の実務』(商事法務、2018年)等、国内外の紛争解決に関する執筆、講演歴多数。
1996年東京大学法学部卒業、 1998年弁護士登録(第二東京弁護士会)、森綜合法律事務所(現在森・濱田松本法律事務所)入所、2004年シカゴ大学ロースクール(LL.M)卒業、 ヒューストン市Fulbright & Jaworski法律事務所にて執務、2005年ニュ-ヨーク州弁護士登録、2007年東京地方裁判所民事訴訟の運営に関する懇談会委員(~2019年)、2020年一般社団法人日本国際紛争解決センター アドバイザリーボード委員(~現在)、2021年日本商事仲裁協会・Japan Commercial Arbitration Journal 編集委員会委員(~現在)等。

 

(たかはし・せり)

森・濱田松本法律事務所外国弁護士
国際仲裁をはじめとした国際紛争解決を専門とする。大手外資系法律事務所の東京、ドバイ及び香港オフィスでの勤務経験を有し、建設紛争、合弁事業に関する紛争等、様々な分野における国際商事仲裁や専門家による紛争解決手続などに携わってきた。2020年より、森・濱田松本法律事務所の国際紛争解決チームに属し、シンガポールオフィスにおいて勤務中。
2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業、2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2017年コロンビア大学ロースクール(LL.M)卒業、2018年ニューヨーク州弁護士登録。




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