◆SH3886◆中国:新ネットワークセキュリティ審査弁法の制定及び日系企業への影響(上) 鹿 はせる/張 玥(2022/01/24)
中国:新ネットワークセキュリティ審査弁法の制定及び日系企業への影響(上)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 鹿 はせる
張 玥
2021年12月28日に、中国の国家ネットワーク情報弁公室(中国語:国家互联网信息办公室)は、国家発展改革委員会、証券監督管理委員会等の13部門と連名で、2020年に制定されたネットワークセキュリティ審査弁法(以下「旧弁法」という。)に代えて、「ネットワークセキュリティ審査弁法」(中国語:网络安全审查办法。以下「新弁法」という。)を制定し、2022年2月15日から施行すると公表した。新弁法制定の直接の引き金となったのは、昨年日本でも広く報じられたDiDiの米国上場問題であるが、内容は昨年に成立したデータセキュリティ法(中国語:数据安全法)、個人情報保護法等一連の中国のデータプロテクション法制の一角をなすものであり、以下に述べるように日系企業への影響も決して無視できないと考えられることから、本稿で概要を解説する。
1 立法の経緯及び位置づけ
2017年から施行された中国サイバーセキュリティ法(中国語:网络安全法)35条では、「基幹情報インフラ(中国語:关键信息基础设施)の運営者は、ネットワーク関連製品とサービスを購入し、国家安全に影響を与える可能性がある場合、国家ネットワーク情報部門及び国務院の関連部門によるセキュリティ審査を経るものとする」と規定していたため、同セキュリティ審査の具体的な手続を定めた旧弁法が制定されていた。
昨年(2021年)7月2日、中国ネットワークセキュリティ審査弁公室(中国語:国家网络安全审查办公室)は、6月末に米国のニューヨーク証券取引所に上場したばかりの中国配車アプリの最大手DiDiに対して、国家安全上の懸念があるとして、国家安全法、サイバーセキュリティ法に基づき、旧弁法による調査を行うと発表し、中国国内のアプリ新規ダウンロードを禁止するなどの措置を講じた。しかし、この時同年6月に制定されたばかりのデータセキュリティ法は未だ施行前であり(その後9月1日施行)、サイバーセキュリティ法に基づき制定・施行されていた旧弁法には、中国企業による海外上場の際にセキュリティ審査を行うことの明確な根拠規定が欠けていた。
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(ろく・はせる)
長島・大野・常松法律事務所東京オフィスパートナー。2006年東京大学法学部卒業。2008年東京大学法科大学院修了。2017年コロンビア大学ロースクール卒業(LL.M.)。2018年から2019年まで中国大手法律事務所の中倫法律事務所(北京)に駐在。M&A等のコーポレート業務、競争法業務の他、在中日系企業の企業法務全般及び中国企業の対日投資に関する法務サポートを行なっている。
(Yue・Zhang)
日本長島・大野・常松律師事務所上海オフィス顧問。2016年上海交通大学法学部卒業、2020年慶応義塾大学法学研究科卒業。現在長島・大野・常松法律事務所上海オフィスの顧問として一般企業法務、M&A及び企業再編を中心に幅広い分野を取り扱っている。(※中国法により中国弁護士としての登録・執務は認められていません。)
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