◆SH3884◆国際契約法務の要点――FIDICを題材として 第40回 第8章・Suspensionとtermination(3) 大本俊彦/関戸 麦/高橋茜莉(2022/01/20)

国際契約法務の要点――FIDICを題材として

第40回 第8章・Suspensionとtermination(3)

京都大学特命教授 大 本 俊 彦

森・濱田松本法律事務所     
弁護士 関 戸   麦

弁護士 高 橋 茜 莉

 

第40回 第8章・Suspensionとtermination(3)

4 Employerの主導によるtermination

⑴ 概要

 Employerは、Contractorの債務不履行がある場合に契約を解除できるほか、理由なしにも解除できるというのが、FIDICにおける基本的なルールである。一方、Contractorには、理由なしの解除権は認められていない。これは、工事等を誰に任せるかは、施主たるEmployerが自由に決定できてしかるべきであるという発想に基づくものと考えられる。このようなルールは、適用法令のもとでの原則的なルールとは必ずしも一致しない。実際、日本法の請負契約に関する原則的なルールには、注文者による理由なしの解除は含まれていない(ただし、日本法のもとでも、当事者間の合意によりFIDICと同様のルールを設けることはもちろん可能である)。

 しかし、Contractorにとって、契約の解除は、得られるはずであった工事代金の喪失を意味する。そのため、理由なしの解除の場合には、解除後の清算においてEmployerがContractorに支払う金額が、債務不履行に基づく解除に比べて大きくなるなど、Contractorに配慮した仕組みが設けられている。つまり、FIDICは、工事等の委託先を自由に決定できるEmployerの利益と、Contractorの経済的利益のバランスを取ろうとしていると言えよう。

 以下では、Employer主導の解除のうち、まずContractorの債務不履行に基づく解除を取り扱い、理由なしの解除については次回取り扱うこととする。

 

⑵ Contractorの債務不履行に基づくtermination

 (a) 解除事由

 Contractorの債務不履行に関連する解除事由は、15.2.1項で詳細に定められている(なおこれとは別に、9.4項 (b) および11.4項 (d) が、完工時の検査の不合格・Taking Over後の瑕疵修補の懈怠という特定の債務不履行に基づくEmployerの解除権を認めており、この場合の解除には15.2項が適用されないことに注意が必要である)。その大まかな内容は、下記のとおりである。

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(おおもと・としひこ)

国立大学法人京都大学経営管理大学院 特命教授
昭和49年(1974年)京都大学工学研究科土木工学専攻(修士課程)を修了後、大成建設(株)に入社。主に国際工事を担当し、工事管理を経て契約管理・紛争解決にかかわる。昭和64年~平成3年(1989年~1991年)、ロンドン大学で「建設法と仲裁」の修士課程を修める。その後英国仲裁人協会より公認仲裁士(フェロー:FCIArb)の資格を得る。平成12年(2000年)、大成建設を退社し、「大本俊彦 建設プロジェクト・コンサルタント」を開業。平成14年(2002年)、京都大学博士(工学)を取得。平成18年4月(2006年4月)、京都大学経営管理大学院教授となる。FIDIC プレジデント・リストに掲載されているアジアで唯一のディスピュート・ボード(DB)アジュディケーターとして数々のプロジェクトのDBメンバーを務めている。また、英国土木学会(ICE)のフェロー・メンバーでもある。そのほか様々な国際仲裁センターの仲裁人パネリストとして仲裁人を務め、シンガポール調停センター、京都国際調停センターの調停人パネリストである。

 

(せきど・むぎ)

森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士
訴訟、仲裁等の紛争解決の分野において、Chambers、Legal 500等の受賞歴多数。『わかりやすい国際仲裁の実務』(商事法務、2019年)、「パネルディスカッション 争点整理は、口頭議論で活性化するか」(判例タイムズNo.1453、2018年)、『わかりやすい米国民事訴訟の実務』(商事法務、2018年)等、国内外の紛争解決に関する執筆、講演歴多数。
1996年東京大学法学部卒業、 1998年弁護士登録(第二東京弁護士会)、森綜合法律事務所(現在森・濱田松本法律事務所)入所、2004年シカゴ大学ロースクール(LL.M)卒業、 ヒューストン市Fulbright & Jaworski法律事務所にて執務、2005年ニュ-ヨーク州弁護士登録、2007年東京地方裁判所民事訴訟の運営に関する懇談会委員(~2019年)、2020年一般社団法人日本国際紛争解決センター アドバイザリーボード委員(~現在)、2021年日本商事仲裁協会・Japan Commercial Arbitration Journal 編集委員会委員(~現在)等。

 

(たかはし・せり)

森・濱田松本法律事務所外国弁護士
国際仲裁をはじめとした国際紛争解決を専門とする。大手外資系法律事務所の東京、ドバイ及び香港オフィスでの勤務経験を有し、建設紛争、合弁事業に関する紛争等、様々な分野における国際商事仲裁や専門家による紛争解決手続などに携わってきた。2020年より、森・濱田松本法律事務所の国際紛争解決チームに属し、シンガポールオフィスにおいて勤務中。
2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業、2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2017年コロンビア大学ロースクール(LL.M)卒業、2018年ニューヨーク州弁護士登録。

 




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