◆SH3845◆国際契約法務の要点――FIDICを題材として 第35回 第7章・Defect等(1) 大本俊彦/関戸 麦/高橋茜莉(2021/12/02)

国際契約法務の要点――FIDICを題材として

第35回 第7章・Defect等(1)

京都大学特命教授 大 本 俊 彦

森・濱田松本法律事務所     
弁護士 関 戸   麦

弁護士 高 橋 茜 莉

 

第35回 第7章・Defect等(1)

1 リスク分担ルール

 今回からは、工事目的物の不具合であるdefect(瑕疵)等について、解説する。紛争の対象となりやすい点であり、工事の遅延と、増加コスト請求と並ぶ、紛争の典型例といえるテーマである。なお、日本法では、民法改正により「瑕疵」という用語が「(契約)不適合」に置き換えられたが、英語の「defect」には「瑕疵」の方がより適すると考えるため、これを用いることとする。

 defectに関するリスク分担であるが、その発生原因がContractorの業務範囲内にある限り、Contractorがそのリスクを負担するというのが基本的なルールである。

 ただし、defectに該当するか否かが明確でないこと、あるいはdefectに該当するとしてもその発生原因がContractorの業務範囲内であるかが明確でないことも多く、Contractorがその責任を否定することが往々にしてある。

 FIDICもdefectの定義は定めておらず、その該当性の判断は容易ではない。その理由としては、①瑕疵の原因やその責任の在りかの究明に技術的、専門的な評価が必要になり得ること、②工事の進行に伴い、様々な建造物の構成要素が付加されていく中で、defectとされる事象が見えにくい場所に隠れ得ること、③経年劣化との区別が明確とは限らないこと等がある。これらは、紛争になりやすい理由でもある。

 Contractorのリスク分担の範囲に関する規定としては、11.2項が、Remedying Defects(瑕疵の補修)が以下のいずれかに該当するときは、Contractorのリスクとコストにおいて当該瑕疵の補修作業が行われなければならないと定めている。

 

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(おおもと・としひこ)

国立大学法人京都大学経営管理大学院 特命教授
昭和49年(1974年)京都大学工学研究科土木工学専攻(修士課程)を修了後、大成建設(株)に入社。主に国際工事を担当し、工事管理を経て契約管理・紛争解決にかかわる。昭和64年~平成3年(1989年~1991年)、ロンドン大学で「建設法と仲裁」の修士課程を修める。その後英国仲裁人協会より公認仲裁士(フェロー:FCIArb)の資格を得る。平成12年(2000年)、大成建設を退社し、「大本俊彦 建設プロジェクト・コンサルタント」を開業。平成14年(2002年)、京都大学博士(工学)を取得。平成18年4月(2006年4月)、京都大学経営管理大学院教授となる。FIDIC プレジデント・リストに掲載されているアジアで唯一のディスピュート・ボード(DB)アジュディケーターとして数々のプロジェクトのDBメンバーを務めている。また、英国土木学会(ICE)のフェロー・メンバーでもある。そのほか様々な国際仲裁センターの仲裁人パネリストとして仲裁人を務め、シンガポール調停センター、京都国際調停センターの調停人パネリストである。

 

(せきど・むぎ)

森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士
訴訟、仲裁等の紛争解決の分野において、Chambers、Legal 500等の受賞歴多数。『わかりやすい国際仲裁の実務』(商事法務、2019年)、「パネルディスカッション 争点整理は、口頭議論で活性化するか」(判例タイムズNo.1453、2018年)、『わかりやすい米国民事訴訟の実務』(商事法務、2018年)等、国内外の紛争解決に関する執筆、講演歴多数。
1996年東京大学法学部卒業、 1998年弁護士登録(第二東京弁護士会)、森綜合法律事務所(現在森・濱田松本法律事務所)入所、2004年シカゴ大学ロースクール(LL.M)卒業、 ヒューストン市Fulbright & Jaworski法律事務所にて執務、2005年ニュ-ヨーク州弁護士登録、2007年東京地方裁判所民事訴訟の運営に関する懇談会委員(~2019年)、2020年一般社団法人日本国際紛争解決センター アドバイザリーボード委員(~現在)、2021年日本商事仲裁協会・Japan Commercial Arbitration Journal 編集委員会委員(~現在)等。

 

(たかはし・せり)

森・濱田松本法律事務所外国弁護士
国際仲裁をはじめとした国際紛争解決を専門とする。大手外資系法律事務所の東京、ドバイ及び香港オフィスでの勤務経験を有し、建設紛争、合弁事業に関する紛争等、様々な分野における国際商事仲裁や専門家による紛争解決手続などに携わってきた。2020年より、森・濱田松本法律事務所の国際紛争解決チームに属し、シンガポールオフィスにおいて勤務中。
2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業、2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2017年コロンビア大学ロースクール(LL.M)卒業、2018年ニューヨーク州弁護士登録。

 




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