◆SH3802◆中国:9月1日より施行 中国データ安全法(上) 川合正倫/鈴木章史(2021/10/25)

中国:9月1日より施行 中国データ安全法(上)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 川 合 正 倫

弁護士 鈴 木 章 史

 

はじめに

 データ利用の拡大が進む社会情勢の下での国家の安全保障と経済社会の発展を目的とした中国の「データ安全法」(以下、「本法」という)が2021年9月1日より施行された。本法は、2017年6月1日に施行されたネットワーク安全法、2021年11月1日から施行される個人情報保護法とならび中国の情報安全法制の基幹法と位置づけられる。

 本稿では、本法のうち中国で事業活動を行う日本企業に特に重要と考えられる規定について概説する(引用条文はいずれも本法の条文を指す。)。

 

第1 概要及び適用対象

 本法は適用対象が非常に広い点が特徴である。本法は、「中国国内におけるデータの取扱い行為及びその安全管理」に適用される(2条1項)。「データ」とは、「電子又はその他の方法による情報の記録」(3条1項)と定義されており、企業の事業活動によって生じるあらゆる情報の記録が規制の対象となり、電子的なデータに限らず紙面上に記載される情報もデータに含まれるものと考えられる。また、規制の対象となる行為は「データの取扱い」と規定し、これには、「データの収集、保存、使用、加工、転送、提供又は公開などの行為」(3条2項)が含まれるとされ、非常に広い概念となっている。

 その結果、自然人と法人、内資企業と外資企業といった区別なく、中国で事業活動を行うほぼ全ての事業主体の情報管理の全過程に適用されることになる。

 なお、個人情報に関するデータの取扱いについては、関連の法律規定に従うとされており(53条)、すでに施行されているネットワーク安全法に加え、2021年11月1日より施行される個人情報保護法が適用される。その他、国家機密に関するデータの取扱い行為には国家機密保護法等の規定が(53条)、軍事データの安全保護に関しては中央軍事委員会が別途制定する規定が適用される(54条)。

 本法は7章55条で構成され、主にデータ保護に関し国が採用する制度(本法第3章、本稿第3で概説)、データ活動を行う主体の義務(本法第4章、本稿第4で概説)、政務データの安全保護と公開(本法第5章、本稿第5で概説)及び罰則(本法第6章、本稿第6で概説)に関して規定されている。

 

第2 海外の事業主体への適用

 本法は、原則として、中国国内でのデータの取扱い行為に適用されるが(2条1項)、中国国外でのデータの取扱い行為であっても、中国の安全、公共の利益又は公民、組織の合法的な権益が損なわれた場合には、法的責任を追及できる旨の規定が設けられている(2条2項)。本規定は国家の安全保障の観点が強調された規定であり、中国域外のデータの取扱いについても、中国の安全保障に関わる行為については、法的責任を追及する余地を認めたものと考えられる。例えば、中国向けの事業を行う国外事業者の中には、中国国内にはオフィスやサーバーを設けずに、中国国外のサーバーを通じて中国向けのウェブサイトを開設し、主として中国向けの事業活動を行っているケースがあるが、このようなケースにおいて、中国の安全、公共の利益又は公民、組織の合法的な権益が損なわれたと判断された場合、本条項が適用される可能性がある 。個人情報保護法においても域外適用の規定があることから、中国国外の事業者であっても、中国向けの事業を行う場合には注意が必要となる。

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(かわい・まさのり)

長島・大野・常松法律事務所上海オフィス一般代表。2011年中国上海に赴任し、2012年から2014年9月まで中倫律師事務所上海オフィスに勤務。上海赴任前は、主にM&A、株主総会等のコーポレート業務に従事。上海においては、分野を問わず日系企業に関連する法律業務を広く取り扱っている。クライアントが真に求めているアドバイスを提供することが信条。

 

(すずき・あきふみ)

2005年中央大学法学部卒業。2007年慶應義塾大学法科大学院修了。2008年弁護士登録(第一東京弁護士会)。同年都内法律事務所入所。2015年北京大学法学院民商法学専攻修士課程修了。同年長島・大野・常松法律事務所入所。2021年5月より中倫律師事務所上海オフィスに出向中。主に、日系企業の対中投資、中国における企業再編・撤退、危機管理・不祥事対応、中国企業の対日投資案件、その他一般企業法務を扱っている。

 

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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