◆SH0729◆法のかたち-所有と不法行為 第十六話-6「古代・中世の定住商業における所有権の観念化」 平井 進(2016/07/08)

法のかたち-所有と不法行為

第十六話 古代・中世の定住商業における所有権の観念化

法学博士 (東北大学)

平 井    進

 

6  占有と所有-ローマ法との対比

 前18世紀のハンムラビ「法典」には、所有・不法行為・契約という私法の基本に関することがらが述べられていた。前述のように、遠隔地貿易に関して、「占有できない対象を所有する」と構成することができる法関係のモデルは、古代メソポタミアを起源としている。

 その法関係は、古代ギリシャに伝えられたが、本来的に農業国家であった古代ローマに伝えられた時には、海事法という分野においてであった。農業国家においては、現実的な占有と観念的な所有は重複する概念となる。

 ここで検討していることは、占有と所有の理論的モデルを、一つの法関係における側面(その事実と権利)としてではなく、異る法関係とするものである。すなわち、占有の権利は、その物理的な占有を基本として、それが失われたときにそれを回復する請求権であるのに対して、純粋な所有の権利は、物理的な占有を前提とせず、その権利を観念的に取得または維持するものである。ただし、広義の所有の権利は、占有における場合を含む。(例えば、前述のように、A地の者がB地である物を購入させ、それをC地に運ばせて売却する場合、所有者はその所有物を見ることすらないが、その物がA地を経由すれば、それを占有することはありうる。)

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(ひらい すすむ)

大阪大学で物理学を専攻。1970年にソニーに入社。通商・輸出管理部統括部長を経て2008年に定年退職。2014年に東北大学博士課程(法哲学)修了。法学博士(東北大学)。