◆SH3788◆国際契約法務の要点――FIDICを題材として 第28回 第5章・Delay(3)――Delay analysis 大本俊彦/関戸 麦/高橋茜莉(2021/10/14)

国際契約法務の要点――FIDICを題材として

第28回 第5章・Delay(3)――Delay analysis

京都大学特命教授 大 本 俊 彦

森・濱田松本法律事務所     
弁護士 関 戸   麦

弁護士 高 橋 茜 莉

 

第28回 第5章・Delay(3)――Delay analysis

1 遅延分析の必要性

 ContractorがEmployerにEOTを請求するには、問題となる遅延がEmployerに帰責できるか、少なくともContractorには責任がなく、契約上Employerが責任を負担するとされていること(たとえばExceptional Eventによる遅延であること)を示す必要があるのは、前回までに述べたとおりである。この帰責性を示すうえで重要なのが、遅延分析(delay analysis)である。

 遅延分析とは、簡単に言えば、「どのような事象が、どの作業に影響し、どの範囲で工期を遅延させたか」についての分析である。工期が遅れたとき、遅延が生じたこと自体は明らかであっても、その原因となった事象や、ある特定の事象によって生じた遅延の具体的な日数などは、一見して明らかでない場合が多い。実際に工期が遅れる前に、生じ得る遅延を予想する際も同じである。特に、複数の工程が並行して進められる大規模なプロジェクトにおいては、その傾向が顕著であるため、遅延分析が不可欠であると言っても過言ではない。

 

2 遅延分析の基本的な考え方 ――critical path

⑴ Critical pathの内容

 遅延分析の手法は多種多様であるが、その多くに共通している基本的な考え方が「critical path」である。Critical pathとは、次のような手順によって特定される、工程表における道筋のことである。

続きはこちらから

 

(おおもと・としひこ)

国立大学法人京都大学経営管理大学院 特命教授
昭和49年(1974年)京都大学工学研究科土木工学専攻(修士課程)を修了後、大成建設(株)に入社。主に国際工事を担当し、工事管理を経て契約管理・紛争解決にかかわる。昭和64年~平成3年(1989年~1991年)、ロンドン大学で「建設法と仲裁」の修士課程を修める。その後英国仲裁人協会より公認仲裁士(フェロー:FCIArb)の資格を得る。平成12年(2000年)、大成建設を退社し、「大本俊彦 建設プロジェクト・コンサルタント」を開業。平成14年(2002年)、京都大学博士(工学)を取得。平成18年4月(2006年4月)、京都大学経営管理大学院教授となる。FIDIC プレジデント・リストに掲載されているアジアで唯一のディスピュート・ボード(DB)アジュディケーターとして数々のプロジェクトのDBメンバーを務めている。また、英国土木学会(ICE)のフェロー・メンバーでもある。そのほか様々な国際仲裁センターの仲裁人パネリストとして仲裁人を務め、シンガポール調停センター、京都国際調停センターの調停人パネリストである。

 

(せきど・むぎ)

森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士
訴訟、仲裁等の紛争解決の分野において、Chambers、Legal 500等の受賞歴多数。『わかりやすい国際仲裁の実務』(商事法務、2019年)、「パネルディスカッション 争点整理は、口頭議論で活性化するか」(判例タイムズNo.1453、2018年)、『わかりやすい米国民事訴訟の実務』(商事法務、2018年)等、国内外の紛争解決に関する執筆、講演歴多数。
1996年東京大学法学部卒業、 1998年弁護士登録(第二東京弁護士会)、森綜合法律事務所(現在森・濱田松本法律事務所)入所、2004年シカゴ大学ロースクール(LL.M)卒業、 ヒューストン市Fulbright & Jaworski法律事務所にて執務、2005年ニュ-ヨーク州弁護士登録、2007年東京地方裁判所民事訴訟の運営に関する懇談会委員(~2019年)、2020年一般社団法人日本国際紛争解決センター アドバイザリーボード委員(~現在)、2021年日本商事仲裁協会・Japan Commercial Arbitration Journal 編集委員会委員(~現在)等。

 

(たかはし・せり)

森・濱田松本法律事務所外国弁護士
国際仲裁をはじめとした国際紛争解決を専門とする。大手外資系法律事務所の東京、ドバイ及び香港オフィスでの勤務経験を有し、建設紛争、合弁事業に関する紛争等、様々な分野における国際商事仲裁や専門家による紛争解決手続などに携わってきた。2020年より、森・濱田松本法律事務所の国際紛争解決チームに属し、シンガポールオフィスにおいて勤務中。
2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業、2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2017年コロンビア大学ロースクール(LL.M)卒業、2018年ニューヨーク州弁護士登録。




メールで情報をお届けします
(毎週火曜日・金曜日)