◆SH3692◆会社法・金商法と会計・監査のクロスオーバー(7) 会計限定監査役の任務――ミクロの不幸、マクロの幸せ? 弥永真生(2021/07/20)

会社法・金商法と会計・監査のクロスオーバー(7)
会計限定監査役の任務――ミクロの不幸、マクロの幸せ?

明治大学専門職大学院会計専門職研究科専任教授

弥 永 真 生

 

 2021年7月19日、最高裁判所第二小法廷(裁判長:草野耕一)は、以下のように判示し、原判決を破棄し、差し戻した(令和元年(受)第1968号)。

  1.   「監査役設置会社(会計限定監査役を置く株式会社を含む。)において,監査役は,計算書類等につき,これに表示された情報と表示すべき情報との合致の程度を確かめるなどして監査を行い,会社の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかについての意見等を内容とする監査報告を作成しなければならないとされている(会社法436条1項,会社計算規則121条2項(平成21年法務省令第7号による改正前は149条2項),122条1項2号(同改正前は150条1項2号))。この監査は,取締役等から独立した地位にある監査役に担わせることによって,会社の財産及び損益の状況に関する情報を提供する役割を果たす計算書類等につき(会社法437条,440条,442条参照),上記情報が適正に表示されていることを一定の範囲で担保し,その信頼性を高めるために実施されるものと解される。
     そうすると,計算書類等が各事業年度に係る会計帳簿に基づき作成されるものであり(会社計算規則59条3項(上記改正前は91条3項)),会計帳簿は取締役等の責任の下で正確に作成されるべきものであるとはいえ(会社法432条1項参照),監査役は,会計帳簿の内容が正確であることを当然の前提として計算書類等の監査を行ってよいものではない。監査役は,会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでなくとも,計算書類等が会社の財産及び損益の状況を全ての重要な点において適正に表示しているかどうかを確認するため,会計帳薄の作成状況等につき取締役等に報告を求め,又はその基礎資料を確かめるなどすべき場合があるというべきである。そして,会計限定監査役にも,取締役等に対して会計に関する報告を求め,会社の財産の状況等を調査する権限が与えられていること(会社法389条4項,5項)などに照らせば,以上のことは会計限定監査役についても異なるものではない。
     そうすると,会計限定監査役は,計算書類等の監査を行うに当たり,会計帳簿が信頼性を欠くものであることが明らかでない場合であっても,計算書類等に表示された情報が会計帳簿の内容に合致していることを確認しさえすれば,常にその任務を尽くしたといえるものではない。

 本判決は、(通常の)監査役について述べた上で、「以上のことは会計限定監査役についても異なるものではない」としているため、会計監査人設置会社以外の会社における、監査役による計算関係書類の監査すべてに妥当することは明らかであり、射程が広く、実務上重要な判断であると位置づけられる。

 本判決は、解釈論としては手堅いものであると思われる。

 第1に、会社計算規則121条2項は「計算関係書類に表示された情報と計算関係書類に表示すべき情報との合致の程度を確かめ」るとしているのであって、会計帳簿の記録等と計算関係書類に表示された情報との合致を確かめるとしていない。

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(やなが・まさお)

明治大学政治経済学部経済学科及び東京大学法学部第1類[私法コース]卒業後、東京大学法学部助手、筑波大学社会科学系講師、同助教授、筑波大学ビジネスサイエンス系(ビジネス科学研究科)教授を歴任。現在は明治大学専門職大学院会計専門職研究科専任教授を務める。
公認会計士第2次試験、情報処理技術者試験(特種・オンライン・1種・2種)、システム監査技術者試験合格。主著:『会計基準と法』、『「資本」の会計』(以上、中央経済社)、『監査人の外観的独立性』(商事法務)、『会計監査人の責任の限定』(有斐閣)、『会計監査人論』(同文舘出版)、『企業会計法と時価主義』(日本評論社)など。




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