◆SH3686◆国際契約法務の要点――FIDICを題材として 第18回 第4章・Variation及びAdjustment(1)――工事等の内容の変更 大本俊彦/関戸 麦/高橋茜莉(2021/07/15)

国際契約法務の要点――FIDICを題材として

第18回 第4章・Variation及びAdjustment(1)――工事等の内容の変更

京都大学特命教授 大 本 俊 彦

森・濱田松本法律事務所     
弁護士 関 戸   麦

弁護士 高 橋 茜 莉

 

第18回 第4章・Variation及びAdjustment(1)――工事等の内容の変更

1 Variationの意義及び種類

 大規模な建設プロジェクトにおいては、最初に計画したとおりに工事が進むことはほとんどなく、状況に応じて計画を変更する必要に迫られるのが常である。こうした計画変更に対応するうえで重要なのが、Variationという仕組みである(なお、アメリカではChange Orderと呼ぶのが一般的である)。

 Variationとは、FIDICの定義によれば、Worksの変更であり(1.1.86項)、Worksとは、契約上、Contractorによる遂行が求められる作業等のことである(1.1.87項、1.1.64項、1.1.80項)。

 Variationは、基本的にEngineerによって主導される。これは、Engineerはプロジェクトを管理するための様々な作業を行う役割を担っているところ、Variationの管理もかかる作業の一環と位置付けられることに起因すると思われる。なお、EngineerがいないSilver Bookにおいては、基本的にEmployerによって主導される。施主としては、最終的な構造物が利用者のニーズに合うことを確保するインセンティブがあるため、Employer側がVariationを主導する建付けは合理的と考えられる。

 EngineerがVariationを指示する契機は、大きく分けて2つである。1つは、Employerの要望による場合であり、資金不足による工事等の縮小もこれに含まれる。もう1つは、Engineerの専門家としての判断に基づき、工事等の適切な遂行のため、作業の追加や変更を行う場合である。なお、この2つは連動することもある。例としては、Engineerの専門家としての判断によるVariationが多数に上った結果、コストも多額に上り、Employerの資金が不足して工事等の縮小を行う場合などが考えられる。

 Engineer(Silver Bookの場合にはEmployer)によって主導されるVariationには、強制的なものと、Contractorからの提案を通じて行われるものの2種類がある。一方、例外的に、Contractorが主導するVariationもある。今回から、それぞれのVariationについて、3回にわたって論じる。

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(おおもと・としひこ)

国立大学法人京都大学経営管理大学院 特命教授
昭和49年(1974年)京都大学工学研究科土木工学専攻(修士課程)を修了後、大成建設(株)に入社。主に国際工事を担当し、工事管理を経て契約管理・紛争解決にかかわる。昭和64年~平成3年(1989年~1991年)、ロンドン大学で「建設法と仲裁」の修士課程を修める。その後英国仲裁人協会より公認仲裁士(フェロー:FCIArb)の資格を得る。平成12年(2000年)、大成建設を退社し、「大本俊彦 建設プロジェクト・コンサルタント」を開業。平成14年(2002年)、京都大学博士(工学)を取得。平成18年4月(2006年4月)、京都大学経営管理大学院教授となる。FIDIC プレジデント・リストに掲載されているアジアで唯一のディスピュート・ボード(DB)アジュディケーターとして数々のプロジェクトのDBメンバーを務めている。また、英国土木学会(ICE)のフェロー・メンバーでもある。そのほか様々な国際仲裁センターの仲裁人パネリストとして仲裁人を務め、シンガポール調停センター、京都国際調停センターの調停人パネリストである。

 

(せきど・むぎ)

森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士
訴訟、仲裁等の紛争解決の分野において、Chambers、Legal 500等の受賞歴多数。『わかりやすい国際仲裁の実務』(商事法務、2019年)、「パネルディスカッション 争点整理は、口頭議論で活性化するか」(判例タイムズNo.1453、2018年)、『わかりやすい米国民事訴訟の実務』(商事法務、2018年)等、国内外の紛争解決に関する執筆、講演歴多数。
1996年東京大学法学部卒業、 1998年弁護士登録(第二東京弁護士会)、森綜合法律事務所(現在森・濱田松本法律事務所)入所、2004年シカゴ大学ロースクール(LL.M)卒業、 ヒューストン市Fulbright & Jaworski法律事務所にて執務、2005年ニュ-ヨーク州弁護士登録、2007年東京地方裁判所民事訴訟の運営に関する懇談会委員(~2019年)、2020年一般社団法人日本国際紛争解決センター アドバイザリーボード委員(~現在)、2021年日本商事仲裁協会・Japan Commercial Arbitration Journal 編集委員会委員(~現在)等。

 

(たかはし・せり)

森・濱田松本法律事務所外国弁護士
国際仲裁をはじめとした国際紛争解決を専門とする。大手外資系法律事務所の東京、ドバイ及び香港オフィスでの勤務経験を有し、建設紛争、合弁事業に関する紛争等、様々な分野における国際商事仲裁や専門家による紛争解決手続などに携わってきた。2020年より、森・濱田松本法律事務所の国際紛争解決チームに属し、シンガポールオフィスにおいて勤務中。
2008年東京大学法学部卒業、2010年東京大学法科大学院卒業、2011年弁護士登録(第二東京弁護士会)、2017年コロンビア大学ロースクール(LL.M)卒業、2018年ニューヨーク州弁護士登録。




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