◆SH3321◆弁護士の就職と転職Q&A Q131「訴訟系、ディール系、規制法系で弁護士の向き/不向きはあるか?」 西田 章(2020/09/28)

弁護士の就職と転職Q&A

Q131「訴訟系、ディール系、規制法系で弁護士の向き/不向きはあるか?」

西田法律事務所・西田法務研究所代表

弁護士 西 田   章

 

 弁護士のキャリアの成否は、本人の能力の問題以外にも、「自分に合った仕事ができているかどうか」という環境選択に大きく依存します。これは、研究者とは大きく異なる点です。頭脳明晰な法学者であれば、公法を専攻しても、私法を専攻しても、実体法を専攻しても、手続法を専攻しても、優れた業績を残せるでしょう。しかし、実務家である弁護士は、「偶々、どんなクライアントのどんな事件を担当したか」という要素によって、その実績に大きな違いが生じてきます。それだけに、充実した職業人生を送るためには、現在、従事している仕事における自分の適性を見極めて、ミスマッチがあれば、環境を選択し直すことも必要になってきます。

 

1 問題の所在

 法律実務家のキャリアにおいて、弁護士になるまでは、同期世代は同じように司法試験の勉強をして、合格後は同じようなカリキュラムの司法修習を受けます。しかし、弁護士になった後は、それぞれが別々の経験を積み重ねていくことになります。一般民事と企業法務で異なるのはもちろんですが、企業法務の範囲内でも、訴訟系、ディール系、規制法系で、優れた弁護士のイメージは異なります。

 訴訟系弁護士では、「困った時に頼りになる」というのがひとつの優れた弁護士のイメージとして存在します。トラブルを抱えて困っているクライアントが、弁護士に相談に行ったら、弁護士も「それは大変だ」と、一緒になって悩み込んでしまったら、「本当にこの弁護士に任せて大丈夫なのか?」という不安をクライアントに生じさせてしまいます。すでに起きてしまったトラブルを悔やむのではなく、「面白いことになってきた!」と、非常事態を楽しむくらいのほうがクライアントに安心感を与えてくれます。

 他方、ディール系では、関係者間の交渉をまとめて契約を締結したらそれで終わりというわけではなく、その後も、クライアントに不測の損害が生じないようにスキームを組んでおくことが求められます。そのため、「もしかしたら、こういう問題が起きるかもしれない」という風に、起こりうる潜在的リスクを漏れなく拾ってくれるような悲観的なタイプのほうがクライアントから高く評価されることがあります。

 また、監督官庁との間での業規制対応での専門家意見を求める場合には、クライアント側が既に詳しい知識を持っているだけに、外部専門家に求める知識水準はきわめて高いものになります。それが故に、どれだけ知能指数が高くても、前提知識に欠ける弁護士に対して、一から業界の常識を教えてあげるのはタイムチャージの無駄遣いになってしまいます。

 

2 対応指針

 専門分野には、生活スタイルや性格との相性が存在します。まず、生活スタイルとして、プライベートに優先度の高い課題(育児や介護等)を抱えている場合には、ディール系の仕事では繁忙期にタイムリーに対応する能力に制限が生じてしまうため、リーガルアドバイザーの中核的な役割を引き受けにくくなります。主任を務めるには、作業のスケジュール管理をしやすい訴訟系の仕事のほうが向く傾向があります。

 性格的に言えば、「勝ち負け」にこだわるタイプであれば、原告側の訴訟代理人業務が向いていますが、被告側の訴訟代理人業務には、穏やかに淡々と仕事をするタイプも向いています。

 規制法分野は、「向き/不向き」が最も強く現れる分野です。実際に担当してみて、「合う」と感じたならば、当該業法を所管する官庁への出向も含めて専門性追求の道を探るべきですが、「合わない」と感じた場合には、早期に、転向を考えることをお勧めします。

続きはこちらから

バックナンバーはこちらから

 

(にしだ・あきら)

✉ akira@nishida.me

1972年東京生まれ。1991年東京都立西高等学校卒業・早稲田大学法学部入学、1994年司法試験合格、1995年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程(研究者養成コース)入学、1997年同修士課程修了・司法研修所入所(第51期)。

1999年長島・大野法律事務所(現在の長島・大野・常松法律事務所)入所、2002年経済産業省(経済産業政策局産業組織課 課長補佐)へ出向、2004年日本銀行(金融市場局・決済機構局 法務主幹)へ出向。

2006年長島・大野・常松法律事務所を退所し、西田法律事務所を設立、2007年有料職業紹介事業の許可を受け、西田法務研究所を設立。現在西田法律事務所・西田法務研究所代表。

著書:『弁護士の就職と転職』(商事法務、2007)




メールで情報をお届けします
(毎週火曜日・金曜日)

サイト内検索

森・濱田松本法律事務所
長島・大野・常松法律事務所

slider_image1
slider_image2

slider_image1
slider_image2
TMI総合法律事務所