◆SH3165◆ウェブ開示事項の拡大に関する会社法施行規則・会社計算規則の改正 渡辺邦広(2020/05/26)

ウェブ開示事項の拡大に関する会社法施行規則・会社計算規則の改正

森・濱田松本法律事務所

弁護士 渡 辺 邦 広

 

1.はじめに

 新型コロナウイルスの影響拡大により、決算に遅れを生じる会社が増えている。上場会社等においては、会社法上、定時株主総会の会日の2週間前までに行う招集の通知に際して、株主総会参考書類並びに計算書類、事業報告及び連結計算書類(計算書類及び事業報告については、監査役等及び会計監査人の監査報告を含む。)を提供しなければならず(会社法299条1項・301条1項・437条・444条6項)、株主の個別の承諾がある場合を除いて、この提供は書面で行わなければならないのが原則である(会社法299条2項・3項・301条1項、会社法施行規則(以下「施行規則」という。)133条2項1号、会社計算規則(以下「計算規則」という。)133条2項1号・134条1項1号)。これらの書類を書面で提供をする場合、印刷・封入に要する期間を織り込む必要があるため、その所要期間は株主数等にもよるものの、上記の各書類を添付した招集通知を定時株主総会の会日の2週間前までに株主に発送するためには、更にその数週間前までには各書類の内容が固まっていなければならないというケースが多いものと思われる。

 会社法上、上記の各書類の一定の事項については、ウェブ開示によるみなし提供が認められているものの(施行規則94条1項・133条3項、計算規則133条4項・134条4項)、例えば、事業報告の事業の経過及びその成果や単体の貸借対照表及び損益計算書については従来ウェブ開示によるみなし提供が認められておらず、これらの事項については、株主に書面で提供しなければならないこととされていた。これらの事項についてもウェブ開示によるみなし提供が認められれば、計算書類や事業報告の印刷・封入に要する時間を省略でき、未曽有の緊急事態とも言うべきコロナ禍の下でタイトとなる株主総会の日程に余裕をもたらすことから、法務省令の改正が望まれる状況にあった。

 本年5月15日に公布・即日施行された会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令(令和2年法務省令第37号。以下「本改正省令」という。)は、このようなニーズを受けて、新型コロナウイルスの影響が拡大する現状を踏まえた時限措置として、一定の要件の下で、従来、ウェブ開示によるみなし提供が認められていなかった事項の一部についてウェブ開示を認めるものである。本改正省令については、法務省から、その内容について解説する文書(以下「本解説文」という。)も公表されている。本年定時株主総会の運営を考えるに当たって重要な改正であるため、本稿では、その内容と実務上の留意点について検討を加えることとする。

 なお、ウェブ開示によるみなし提供制度は、定款の規定があれば、機関設計等を問わず採用することができるものであるが、本稿では、説明の便宜の観点から、特に断らない限り、会計監査人設置会社であり、株主総会の招集通知を書面で行わなければならない取締役会設置会社(会社法299条2項2号)である公開会社を念頭に論じる。また、本稿中意見にわたる部分は筆者の私見であり、筆者が現在所属する又は過去に所属した団体の見解を示すものではない。

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(わたなべ・くにひろ)

森・濱田松本法律事務所パートナー弁護士。コーポレート・ガバナンス業務、株主総会対応、会社法関係争訟を含む紛争解決、M&A / 組織再編を専門とする。2004年東京大学法学部卒業、2006年弁護士登録(第二東京弁護士会)、森・濱田松本法律事務所入所、2012年コロンビア大学ロースクール卒業(LL.M., Harlan Fiske Stone Scholar)、米国 Simpson Thacher & Bartlett 法律事務所にて執務(~2013年4月)、2013年法務省民事局にて執務(平成26年会社法改正を担当)(~2015年6月)。