◆SH3131◆座談会 新型コロナウイルス感染症と令和2年度定時株主総会(下) 藤田友敬 三笘 裕 飯田秀総 塚本英巨(2020/05/01)

座談会
新型コロナウイルス感染症と令和2年度定時株主総会(下)

 

東京大学大学院法学政治学研究科教授〔司会〕 藤田友敬

長島・大野・常松法律事務所/弁護士 三笘 裕

東京大学大学院法学政治学研究科准教授 飯田秀総

アンダーソン・毛利・友常法律事務所/弁護士 塚本英巨

目 次
1 感染リスクを抑える形で株主総会を開催する
 (1)前提:「株主総会運営に係るQ&A」の一般的な性格
 (2)Q1に関して
 (3)Q2、Q3に関して
 (4)Q4に関して
 (5)Q5に関して
                     〔以上(上)掲載〕
2 バーチャル株主総会
 (1)前提:コロナウイルス対策としてのバーチャル株主総会
 (2)完全バーチャル株主総会
 (3)ハイブリッド参加型バーチャル株主総会
 (4)ハイブリッド出席型バーチャル株主総会
3 株主総会の開催時期にかかる論点
 (1)前 提
 (2)単純な延期
 定款の記載(定時株主総会の時期・基準日)との関係
 本来の定時総会のタイミングで決議しなくてはならない事項
 配当の基準日を変更することの問題点
 役員選任との関係
 (3)継続会の利用
 継続会までの期間の問題
 継続会と役員の選任
 (4)別個の株主総会を2回開催する
 いずれが定時株主総会なのか
 第1回の会議を定時株主総会と扱う場合の問題:計算書類の提出との関係
 第2回の会議を定時株主総会と扱う場合の問題:期末の欠損責任
 計算書類が出ていない段階で決議をすることへの是非
 株主総会を2回開催することの費用
4 むすび
                     〔以上(下)掲載〕

 

※本座談会は、オンライン会合の形式により、2020年4月22日に収録されたものであるが、その後に公表された情報も【補足情報】等の形で取り込み、記事として取りまとめている。

 

2 バーチャル株主総会

(1) 前提:コロナウイルス対策としてのバーチャル株主総会

藤田 次にバーチャル株主総会の話に移りたいと思います。ちょうど本年2月末に、経済産業省から「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」(2020年2月26日。以下、「実施ガイド」という)が出されたこともあり、雑誌の特集等で、今回の新型コロナウイルス感染症拡大防止策との関係でバーチャル株主総会に着目した記事をよく見かけるのですが、まず確認として、そもそも新型コロナウイルスの感染症対策としてバーチャル株主総会――実施ガイドの言葉を使うなら「ハイブリッド型バーチャル株主総会」――を志向する会社というのは、かなりの数あるのでしょうか。特に、実施ガイドにいう「ハイブリッド出席型バーチャル株主総会」をやろうという会社はあるのでしょうか。実務の感覚を教えていただければと思います。塚本さんは、ポータルに詳細な記事を書いておられますが(SH3087 事実上の「バーチャルオンリー型株主総会」を志向した「ハイブリッド出席型バーチャル株主総会」の開催のポイント 塚本英巨(2020/04/02))、あそこでは主としてハイブリッド出席型バーチャル株主総会を念頭に置いていましたよね。

塚本 そうです。

藤田 実際に、今年ハイブリッド出席型バーチャル株主総会をやろうという会社はそれなりにあるのでしょうか。

塚本 出席型はそれほど多くない印象でして、今年増えそうだなと感じていますのは参加型です。ただ、その参加型も、リアルタイムで参加して会場の進行と同時並行でコメントを受け付けるということまでするわけではなく、動画配信にとどまる会社が多そうです。さらに出席型まで行うというのは、会社としてはハードルが高いようです。

藤田 今塚本さんがおっしゃったのは、あまり積極的な参加ができないタイプですね。株主総会を録画しておいて後で流すというサービスは、一部の会社が随分前からやっています。そういうレベルの株主サービスとしての動画配信が増えるという程度ですか。

塚本 録画にとどまらず、ライブ配信を行う会社は増えると思います。

藤田 なるほど。ただハイブリッド参加型バーチャル株主総会参加型でも、ある程度のコミュニケーションはなされる――法的な意味での質問権の行使等ではないとしても――ことが想定されているはずですが、ライブではあるが、コミュニケーションがない一方的な放映という感じですか。

塚本 はい、そういう印象です。中には、総会の1週間前までにコメントを受け付け、その上で、当日は、ライブ配信を行い、また、事前に送られてきているコメントに回答するという形で参加型を行うことを考えている会社もあります。

藤田 「参加」といっても、事前アンケートを踏まえて、それに対する回答を現場の発言に取り込んで、それを一方的に配信するという感じですね。

塚本 はい。

藤田 三笘さんも感触は同じですか。

三笘 興味のある会社さんは一定数いらっしゃるのですけれども、結局、出席型は株主の認証の問題とか、もし通信が途絶したらどうなるんだという話とか、いろいろ考えなければならないことがあるので、今回は検討が間に合わないかなという印象です。そうすると、参加型、あるいは参加型の簡易版として会場の様子をストリーミングで流す、ライブ配信するという企業は一定程度出てくるかもしれません。ここで少し実務的な話をすると、結局、こういうことをやろうとすると自社単独ではできないので、どこかの業者(ベンダー)を使わなければならないということになるのですけれども、みんなが6月の後半に総会をやるときに一斉に対応ができるのかというと、証券代行みたいな人的キャパがある業者(ベンダー)がいればできるのかもしれないですが、少なくとも今年については、そういうわけにはたぶんいかない。だから、やりたいと言っても対応してもらえない会社というのは相当数出てきて、これが何年か経つと、だんだん裾野が広がるのかもしれませんけれども、すぐに爆発的に増えるかというと、そうはならないのではないかと思っています。

藤田 実務的にそんな感触だとすると、あえてハイブリッド型株主総会を試みようとする会社は、それほど多数に上るわけではないということでしょうか。特に、ハイブリッド出席型株主総会を行うのは、ウェブ会議のシステムを開発・販売している会社など、極めて限られているものかもしれません。最近新型コロナウイルス感染症対策との関係で、バーチャル株主総会やたら取り上げられたり、またマスコミも株主総会のバーチャル化という方向での報道をしたがる傾向があったりするのですけれども、株主総会をバーチャル化するということは、今回の対策のメインになるか疑わしいということでしょうね。そうはいっても、この際ですから、バーチャル株主総会についていくつかの点を議論させていただきます。

  1. 【補足情報】
  2.   本座談会収録後、パイプドHD株式会社からハイブリッド出席型バーチャル株主総会を開催する旨のアナウンスメントが出された(http://www.pipedohd.com/news/2020/20200422_01.html)。なお同社はオンライン投票システムを提供し、ウェブ会議のシステムを提供する完全子会社を有している。

(2) 完全バーチャル株主総会

藤田 まずバーチャルオンリー型株主総会は現行法の下では不可能で、リアルの総会会場は設けつつ、現実にはそこに来る人をできるだけ減らすことで、事実上のバーチャルオンリー型に近い運営がどこまでできるかという形の議論をしています。しかし、バーチャルオンリー型株主総会ができないと言っているのは、法的な論拠としては、会社法298条1項1号で総会の場所が取締役会の決定事項になっていて、かつ、招集通知にこれを記載しなくてはならないという、きわめて形式的なものです。これに加えて、完全バーチャルな株主総会を禁止する実質的な理由というのはあるのでしょうか。特に実務のほうで、完全バーチャルな株主総会を認めることに実質的な問題があると思われる理由はありますか。

三笘 私は、そもそも完全バーチャルは別に禁止されているわけではなく、解釈でやれるようにする余地はあると思っているのですが、ただ、前提としては、やっぱりインフラがないと無理で、セキュリティーとか、安定性とか、操作性とか、こういうものを兼ね備えたようなシステム開発がちゃんとできれば、これはあり得ると思います。しかし、セキュリティーが怪しいとか、途中で途切れてしまうかもしれないとか、使い方が難しくて、一定のスキルがある人しか参加できないということになってしまうと、これは株主権の行使に制約をかけてしまうことになるので、やっぱり駄目だろう。このあたりが解決できればバーチャルで何も問題はないと思っています。

 少し理屈っぽい話をすると、取締役会も株主総会も会議体なのですけれども、取締役会ではテレビ会議や電話会議を通じて会議ができることになっています。取締役会というのは、マルチラテラル、要するに各取締役同士で多角的に議論が交わされる会議体であるのに対して、株主総会というのはバイラテラル、あるいはハブ・アンド・スポーク形の会議体で、株主が言ったことに経営陣が都度答えるという形になっています。ハブ・アンド・スポークのような形の会議体のほうが本来バーチャルにしやすいはずなのですけれども、現実問題としては、参加者が多いことから逆で、取締役会のほうがバーチャル化が進めやすくなっています。もし技術的な障壁を乗り越えられれば、完全バーチャルの株主総会をやっても法律上も何の問題もないと思っています。

藤田 何点か次元の違った問題があって、第1は、技術的なところを乗り越えられなければ駄目だということで、それはもちろんそうでしょう。現在、ハイブリッド出席型バーチャル株主総会ですら、万一のことを考えるとやりづらいというのでしたら、バーチャルオンリー型株主総会をやる気になれないのは当然です。ただ技術的な点は乗り越えられたとして、あるいは、これを通信の途絶等の場合のセーフハーバーまで手当てするということまで含んだ立法論をするとして、実質論として何か問題はあるでしょうか。

 北村雅史先生が日本私法学会第82回(2018年度)大会のシンポジウムの報告で、「バーチャルオンリー型であれば、株主は取締役と対面して直接説明を聞き、意見、質問を述べる機会がなくなる。これは経営者を株主から隔離するもので、株主総会を通じたガバナンスの実効性が損なわれる」と書かれています。特に今回の新型コロナウイルス感染症対策との関係で、海外では、バーチャル株主総会を解禁する立法をした国もあると聞いていますけれども、こういう実質論がもしあるとすれば、そのような立法には慎重にならざるを得ない。三笘さんなんかは、こういう発想にはあまり実感が湧かないということでしょうか。 

三笘 実感がないというわけではないのですが、そういう場は株主総会じゃなくて株主交流会など、別の場で機会を設ければよいのではないかと思っています。株主総会でやろうとするから決議の取消という法的な問題が出てきて、過剰に安全サイドを見た運用になって余分なコストがかかっているのではないかというのが問題意識です。

藤田 要するに取締役と対面して直接説明を聞き、意見・質問を述べる利益は、株主総会以外の場でもできることにすぎない、株主総会を対面でやることの保護法益としての強さというのは、それほど強くないということですね。

三笘 はい。

藤田 塚本さんも感覚は同じですか。

塚本 はい。基本的に同じでして、現行法の文言上、バーチャルオンリー型が可能かというのは、法務省の見解もありますので難しそうだということではありますが、会社法が、そもそも論として、バーチャルオンリー型を絶対に認めないという前提に立っているとは思っていません。ですので、会社法を改正してバーチャルオンリー型を許容することも可能だと思います。ただ、改正しようとする際に出てくるであろう問題として、デジタルデバイドの問題が考えられます。令和元年会社法改正で株主総会資料の電子提供制度が導入されますが、これについても、デジタルデバイドの問題の関係で、株主の書面交付請求権が認められています。そのため、株主総会についてバーチャルオンリー型を導入しようとする場合には、デジタルデバイドの問題との関係でどのように折り合いをつけるのかというのが、論点になりそうです。

三笘 デジタルデバイドのところについては、少し思うところがありまして、会社法の改正のところでもこの議論が随分あったことは認識しているのですけれども、ただ、今回の新型コロナウイルス問題で、たとえば小学生でもタブレットを使ってオンラインの授業を受けているわけですよね。そういう御時世だという前提で、果たしてデジタルデバイドの議論をそこまで徹底してやらなければいけないのかという点について、私は非常に疑問に思っていまして、考えてみれば、株式の投資自体、会社の情報はほとんどオンラインで出ていて紙では出ていませんので、そもそもコンピューター、インターネットが使えなかったら株式の投資判断もできない状況にあるのです。これは20年、30年前と全然違う状況なので、それにもかかわらず、デジタルデバイドの議論をいまだにあのレベルでやっていることについては、私はいかがなものかなと思っています。

藤田 念のため確認したいのですが、完全バーチャルな株主総会を認める場合も、書面投票用紙は送られてきて、それを送り返すことで議決権行使は可能だという前提なのでしょうか。特に立法論の場合ですけれども。

三笘 それはそうだと思います。

藤田 そうなると株主総会関係類についても、書面交付請求権を行使すれば紙でもらえますので、議決権の行使についてはデジタルデバイドの問題には最低限の対応はできていることになります。質問権を行使したりすることが現場ではできなくなるため、そこにはデジタルデバイドの問題がないわけではないですが。

飯田 学説は伝統的に、物理的に対面して質疑応答することに価値を見出していて、対面であることによる緊張感といった、言葉以外の要素によるコミュニケーションにも意義があると考えてきたように思います。立法論としてバーチャルオンリー総会を認める場合、デジタルデバイドの問題もありますけれども、それに加えて、物理的に対面することが重要だという立場からすると、全株主の同意が必要だという議論もあります。私はそこは全然賛成してないところです。

 機関投資家なら対面で役員と会えるけれども、個人株主ならば会えないというあたりが、物理的な対面を重視する学説の実質論なのかもしれません。けれども、それをあえて株主総会の場でやらなくてはいけないのかというと、それは必須ではないだろうことについて全く三笘さんがおっしゃったとおりだと思います。

塚本 先ほどの物理的に対面することが重要であるという点に関しては、現行法上も、総会において、株主がリアルな総会場に来ることができるようにしておくことを前提に、議長を含む役員の全員が、バーチャルで出席する、テレビ会議や電話会議で出席し、リアルな総会場にはいないということは認められていますし、実際にそのように総会を開催した会社もあります。そのため、役員と対面で議論しないといけない、そこに価値があるという点については、現行法もすでに乗り越えていると考えられます。

藤田 私も感覚は当然皆さんと同じなのですけれども、1点だけ気になっているのは、一種のごまかしができる危険が増えないかということですね。たとえば株主総会で質問権を行使したときに、議長が無視すると、現場に人がいればわかってしまいますし、あるいは総会検査役というのを入れてチェックすることも可能です。バーチャルの場合だと、質問を無視したりしても他の株主は気づかず、証拠も残らないことにならないかという問題があります。リアルの総会を前提とした総会検査役に対応するチェックを、バーチャルとの関係でいかに導入できるかといったことも気になります。技術的にはログがちゃんととれていればよくて、それを閲覧する権利を株主に認めればよいのかもしれないのですけれども、このあたりの技術面に自信がないので、これまであまり積極的なことを言ってこなかったのです。ごまかしができないようなシステムがちゃんと作れて、かつ株主の側からチェックできるようにするという前提を置くと、対面であることそのものの価値が強行法で守らなければいけないような利益だとは、私も思っておりません。

 もっとも最後の点は、論者によって相当意見が分かれるかもしれませんね。さっきチッソ事件の話が出ましたが、一株運動のような活動に積極的な価値があると考える人からすると、バーチャルオンリー型株主総会は容認しがたいでしょうね。令和元年会社法改正における株主提案権の制限に関する国会審議等を見ていると、政治過程においては、そういう声が重視されることもあるかもしれません。

 最後に、今回の新型コロナウイルスの問題が、バーチャル株主総会が進展することへの後押しになる側面はあると思いますか。

三笘 それはあると思います。今まで従前どおりにやるというのが実務の普通の考え方だったのが、どこは削れてどこは守らなければいけないかというのを今回のコロナウイルス問題の中で検討しなくてはならなくなったので、そういう意味では非常によいきっかけになったと思います。

藤田 塚本さんも、そこは同じような感覚ですか。

塚本 はい、同じです。

藤田 塚本さんが、ハイブリッド出席型バーチャル株主総会について詳細な論稿を書かれたのも(塚本・商事法務ポータルSH3087)、今年それが実施されるかどうかはともかく、将来的な検討との関係を睨んでのことなのでしょうね。

塚本 はい、おっしゃるとおりです。

(3) ハイブリッド参加型バーチャル株主総会

藤田 さて、ハイブリッド参加型のバーチャル総会をやるのであれば法的にはあまり問題はないのでしょうか。「参加」と言っても、別に法的な意味で株主権を行使するわけではないですから。もちろん三笘さんに言われたキャパシティーの問題がありますが、それ以外は実務的にはあまり問題ないということですかね。

三笘 そうです。実務的には問題はないですけれども、参加型のバーチャル総会というのがどのぐらい増えるのかについては、先行きはよくわからないなと思っていまして、というのは、会社の側で参加型バーチャル総会のシステムを導入することのメリットは何だと言われると、IR的なメリットは確かにあるのですけれども、結局、会場は準備しなくてはいけない上に、システム対応は仕事として増えますので、コストは当然かかるわけです。何のためにやっているのかというのが明確ではないと、参加型バーチャル総会を導入することに二の足を踏む会社も出てくるのかもしれないなと思っています。さらに、一度これを導入してしまうと、去年まではやっていましたけれども、今年はやりませんというわけにはたぶんいかなくなってしまうので、導入のためのインセンティブみたいなのがちょっと足りないかもしれないとは思っています。

藤田 参加型ですら、ちょっと二の足を踏むという感触は塚本さんも同じですか。

塚本 将来的に出席型を導入するとした上でその一歩手前の試みとして参加型を導入してみようという会社もありますが、参加型ですら躊躇する事情として、動画配信をすると、映像記録として残ってしまいますので、ごまかしが利かないということで、そこへの抵抗感も実務的にはありそうです。

藤田 考えすぎかもしれないですが、参加型は、ある意味中途半端な電子化ですよね。バーチャル株主総会などという触れ込みでやってしまいますと、株主はその場で当然議決権行使できるとか思いかねず、「参加型」バーチャル総会だというので会場に行かないことにしたのに、実際には何もできないじゃないかといった不満が出る危険はないでしょうか。それとも、これは株主に対する周知で何とでも対処できる問題なのでしょうか。

塚本 確かにおっしゃるとおりでして、そのような誤解が生じないようにするため、招集通知や同封書類で、参加型の意味についてきちんと説明しておく必要があると思います。この点に関して、会社によっては、参加型の場合には、「質問」という用語は使わずに「コメント」という用語を使うなどして、法的意味での「出席」や「質問」とは異なるものであるということについて、かなり配慮して進めた会社もあります。

(4) ハイブリッド出席型バーチャル株主総会

藤田 次に、ハイブリッド出席型バーチャル株主総会についても、経産省の実施ガイドで法的問題まで相当詳しく検討されているところ、実施ガイドに詳細に書かれている整理で、基本的に実務的には法的な論点は決着がついたと理解してよろしいですか。出席型の場合ですら、動議など一定の範囲では株主の権利を制限しても問題ない、リアルな総会に参加する機会が保障されているからという整理をしているのですが、実務的には、安心して、それに乗れるという感触でしょうか。ハイブリッド出席バーチャル株主総会型を志向する会社が現状では少ないとすれば、あまり顕在化しないかもしれませんけれども。

三笘 法的な論点の決着については、結論として反対ではないのですけれども、ちょっと微妙な感じがしています。そもそもあそこで妥協しているところというのは、バーチャル出席株主が動議を出せるかという点と、動議に参加できるかという点についてなのですね。動議については、株主総会のリハーサルではいつも練習はするのですけれども、そもそも実務としては、95%以上の会社では動議が出ません。そういう意味では動議対応という非常にイレギュラーな場合について手当てするのに多大なコストがかかるから、そこは大目に見てもよいのではないかと割り切るというのもおかしくはないと思っていますが、理論的にどうかと言われると、最終的に実際に参加できるからいいじゃないかという理由づけでは、動議対応までできるシステムが完成しないと完全バーチャル型には移行できないことになるので、そのロジックに乗ってよいかというのは若干躊躇はあります。

藤田 完全バーチャル型の株主総会になると、嫌ならリアルな総会会場に行けばいいということは言えなくなりますので、動議等にも対処できるようなシステムが組まれることが大前提になるのでしょうね。それができないなら、動議を出せない株主総会を認めるというのと同じになってしまいますから。

 ハイブリッド出席型だと、そこまで深刻に考えなくてもよいのかもしれないのですが、実施ガイドにもかかわらず、ハイブリッド出席型株主総会には一抹のリスクは感じているという感覚でしょうか。

三笘 実際にリアル総会会場も準備しますよということであれば、このガイドにのっとってやること自体は十分可能だとは思っています。

藤田 そうすると、むしろ実務的により深刻な障害は、現実的なロジスティクスといいますか、ファシリティーのほうだということですか。

三笘 そうですね。

藤田 せめてハイブリッド出席型バーチャル株主総会が定着してくれないと、バーチャル総会の議論というのは盛り上がっていかないなと思っているのですけれども、今回、新型コロナウイルス対策としてこれを実施しようというところがそれほどないということでしたら、今日の議論としてはこれ以上深入りしないで次に移りたいと思います。

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(ふじた・ともたか)

東京大学大学院法学政治学研究科教授。東京大学法学部卒業(1988年)、東京大学法学部助手(1988~1991年)、成蹊大学法学部専任講師・助教授(1991~1998年)、東京大学大学院法学政治学研究科助教授(1998~2004年)を経て現職。自動車損害賠償責任保険審議会会長、法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会委員。著作として、『自動運転と法』(有斐閣,2018)〔編著〕、『M&A契約研究――理論・実証研究とモデル契約条項』(有斐閣,2018)〔編著〕、The Rotterdam Rules:  The UN Convention on Contracts for the International Carriage of Goods Wholly or Partly by Sea, 2nd ed, 2020〔Michael Sturley,Gertjan Van der Zielと共著〕がある。
 

(みとま・ひろし)

長島・大野・常松法律事務所パートナー。1991年東京大学法学部卒業。1993年弁護士登録。1998年Harvard Law School卒業(LL.M.)。1998年~1999年Cleary, Gottlieb, Steen & Hamilton LLP (New York)勤務。2004年~2007年東京大学大学院法学政治学研究科助教授。2017年~2019年経済産業省コーポレート・ガバナンス・システム(CGS)研究会(第2期)委員。M&A及び企業組織再編、コーポレート・ガバナンス、危機管理など企業法務全般を扱う。
長島・大野・常松法律事務所 https://www.noandt.com/

 

(いいだ・ひでふさ)

東京大学大学院法学政治学研究科准教授。2002年東京大学法学部卒業、2003年司法修習修了、2006年東京大学大学院法学政治学研究科総合法政専攻修士課程修了、2008年Harvard Law School LL.M修了。東京大学大学院法学政治学研究科・助手、同・助教、神戸大学大学院法学研究科・准教授を経て、現職。主著として、『株式買取請求権の構造と買取価格算定の考慮要素』(商事法務、2013)、『公開買付規制の基礎理論』(商事法務、2015)などがある。

 

(つかもと・ひでお)

アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。2003年東京大学法学部卒業、2004年弁護士登録。2010年~2013年に法務省民事局へ出向し、平成26年会社法改正の企画・立案を担当。また、2016年~公益社団法人日本監査役協会ケース・スタディ委員会専門委員、2017年~2019年経済産業省コーポレート・ガバナンス・システム(CGS)研究会(第2期)委員、2019年~経済産業省新時代の株主総会プロセスの在り方研究会委員。主に、M&A及び株主提案・委任状勧誘を含む株主総会対策をはじめとする会社法関連業務を扱う。
アンダーソン・毛利・友常法律事務所 http://www.amt-law.com/




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