◆SH3100◆弁護士の就職と転職Q&A Q112「採用面接もオンラインで完結するようになっていくのか?」 西田 章(2020/04/13)

弁護士の就職と転職Q&A

Q112「採用面接もオンラインで完結するようになっていくのか?」

西田法律事務所・西田法務研究所代表

弁護士 西 田   章

 

 4月7日に緊急事態宣言が発出されて、法律事務所においても、全面的に在宅勤務に移行する流れが生まれました。これまでも対外的な会議はオンラインに移行しつつありましたが、今後は、所内打合せもオンラインで行われることになります。すべての業務をオンライン化の対象とした場合に、採用面接をこれに含めることの当否も論点として存在しています。

 

1 問題の所在

 伝統的には、法律事務所の採用は、「実際に会ってみてお互いに人柄を確認する」ことが王道とされてきました。司法制度改革により司法試験合格者数が増加して以降は、書類選考の比重が高まりましたが、その場合でも、「書類選考は、面接審査に進める候補者を選抜するための足切り審査」であり、「面接における人物評価がもっとも重要である」と考えられてきました。

 面接も、口述試験的に「業務遂行に求められる資質を備えているかどうか」を確認する作業というよりも、「出身地・出身校が同じ」「共通の知り合いがいる」といった「ご縁」を感じさせられたり、会議室から飲食店に場所を移して、宴席でボス弁から過去の武勇伝を楽しく聞かされて盛り上がったりすることが内定につながる近道と考えられていました(そのため、面接が長引くことは好印象の兆候であり、予定よりも短い時間で終わる面接は不成功を推認させるものでした)。会社訴訟で著名な事務所でも、「会食に連れて行かれてよく食べること」が内定を出すための要件と言われている先もありました。こういった採用手法の背景には、「書類選考では、候補者の学歴や経験等の『建前』部分を知ることはできても、『本音』部分は、実際に面と向かって話をして(さらに欲を言えば、一緒に飲みに行くことで)初めて確認できる」という信仰があったと言えそうです。

 しかし、今回のコロナ・ショックは、このような「対面による人柄確認」方式を維持することを難しくさせています。これまでにも、渉外事務所においては、例外的に、海外に留学・研修中の候補者を対象として、Skype等を用いたオンライン面接が用いられることもありましたが、今後は、国内系事務所の採用においても、オンラインに頼らざるを得ない面が広がっていきます。ただ、オンラインのみで完結させるべきかどうかについては、事務所内におけるアソシエイトの位置付け、所内討議のスタイルや教育方法も絡んだ問題となります。

 

2 対応指針

 コロナ・ショックを一過性のものと捉えて、「いずれは、コロナ前の業務スタイルに戻れるだろう」という期待を抱いている従来型の事務所にとっては、「オンライン面接」は、書類選考を補完するものとして、口述試験的な位置付けに留まり、「(食事は無理でも)直接に対面して人柄を確認してから内定を出したい」というポテンシャル採用のニーズが根強く残りそうです。

 他方、コロナ・ショックを契機として、(コロナ前を理想とするのではなく)弁護士業務そのものをテレワーク中心で回していこうとするデジタル・ネイティブ型の事務所にとっては、「オンライン上で成果を出してくれること」が鍵になることから、即戦力採用をオンラインで完結する先が出てきそうです。

 実務的な工夫としては、「オンライン面接での採用は、歩合給的ノキ弁又は試用期間を設けた身分に留めて、対面での仕事も経てから正規採用に至る」とする二段階採用や、「オンライン面接も、口述試験的な質疑応答のセッションだけでなく、雑談をメインとしたリラックスした雰囲気のオンライン面接も、別途、設定する」という二段階面接が出てくることも予想されます。

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(にしだ・あきら)

✉ akira@nishida.me

1972年東京生まれ。1991年東京都立西高等学校卒業・早稲田大学法学部入学、1994年司法試験合格、1995年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程(研究者養成コース)入学、1997年同修士課程修了・司法研修所入所(第51期)。

1999年長島・大野法律事務所(現在の長島・大野・常松法律事務所)入所、2002年経済産業省(経済産業政策局産業組織課 課長補佐)へ出向、2004年日本銀行(金融市場局・決済機構局 法務主幹)へ出向。

2006年長島・大野・常松法律事務所を退所し、西田法律事務所を設立、2007年有料職業紹介事業の許可を受け、西田法務研究所を設立。現在西田法律事務所・西田法務研究所代表。

著書:『弁護士の就職と転職』(商事法務、2007)




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