◆SH3082◆民法改正の本質と新しい民法学 池田眞朗(2020/03/31)

民法改正の本質と新しい民法学

慶應義塾大学名誉教授・武蔵野大学教授

池 田 眞 朗

 

はじめに

 本年4月1日から、約120年ぶりの民法(債権関係)大改正(平成29年公布)が施行される。賛否両論のあった大改正であるが、本稿では、現状を前向きに把握して、この改正の本質を改めて分析し、あわせて今後の民法学のあり方について論じたい。

基本的な状況把握

 私は、この改正に合わせて改訂した自らの債権法教科書のはしがきに、以下のように書いた。いささか長くなるが、本稿の核心にかかわるところなので、引用をお許しいただきたい。

 「今回の2020年施行の民法大改正は、人間の営みである以上、うまくいったところも多々あるが、そうでないところもある。従来の疑問点を払拭してわかりやすくなったところもあれば、かえって複雑でややこしくなったり、中には新たな紛争を生み出しそうなところさえある。改正作業の途中でも、試案を作った学者たちに対して、他の学者や法曹や市民団体などが反対をしたところも多かった。実際、出来上がった改正法を見ると、市民法の改正というよりは、取引法の改正となっているところが多い。つまり、市民といっても消費者のための改正というよりも、取引実務を扱う法律家や企業の法務部員を名宛てにしたような改正も多いのである。

 けれども、そういう紆余曲折を経て、このような新しい改正民法が誕生したことの総体が、令和時代の、2020年代の、わが国の「時代意思」の表れとみるべきなのである。伝統的な、「市民の基本法」という「民法観」自体が変容してきているという言い方もできよう。だからこそ、これから民法を学ぶ人たちには、新しいルールの意味するところ、目指すところ、問題を含むところ、を適切に教え、このルールの下でどう生きていくべきなのかを教えなければならない。A説だB説だなどということはまさに二の次なのである」(池田真朗『スタートライン債権法〔第7版〕』(日本評論社、2020))。  

 つまり、私の基本的な状況把握は、①今回の民法改正の特徴は、「市民法から取引法・金融法へ」(上記教科書の帯に採用した表現)というものであり、②良いところも悪いところも合わせて、このような形で民法改正を実現させたのは、まさにわが国の現代の「時代意思」というものなのである、という2点に集約される。

 以下この把握に基づいて論旨を展開したい。

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(いけだ・まさお)

武蔵野大学教授(前副学長)、慶應義塾大学名誉教授。専門は、民法、金融法。動産債権譲渡特例法、電子記録債権法の立法に関与。司法試験考査委員(新試験制度創設時民法主査)、国連国際商取引法委員会作業部会日本代表、日本学術会議法学委員長等を歴任。主著は『債権譲渡の研究』全4巻(弘文堂)。2012年紫綬褒章受章。

 




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