◆SH3077◆海賊版対策の強化等を内容とする著作権法改正法案が閣議決定される 冨田雄介(2020/03/27)

海賊版対策の強化等を内容とする著作権法改正法案が閣議決定される

岩田合同法律事務所

弁護士 冨 田 雄 介

 

 インターネット上で漫画・雑誌等の海賊版をアップロードする行為等による著作権者等の被害は深刻化しており、例えば、海賊版サイトとして有名であった「漫画村」(現在は閉鎖済みであり、元運営者は著作権法違反等により起訴されている。)については、同サイトの利用者によって約3000億円分の出版物が無料で読まれたとの試算がなされている。また、同サイトの閉鎖後も依然として多数の海賊版サイトが存在しており、アクセス数上位10サイトだけで月間延べ6500万人が利用しているとの試算もなされている(文化庁「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律案 御説明資料」)。

 この点、現在の著作権法上、著作権者の許可なく著作物をインターネット上にアップロードする行為は著作物の種類にかかわらず違法とされているが(著作権法23条1項、63条1項)、アップロード者が特定できなかったり海外にいたりするなど、著作権者等による迅速かつ円滑な権利行使や摘発が困難な場合があるとの指摘がなされていた。

 また、かかる海賊版サイトについては、著作権を侵害するコンテンツ(以下「侵害コンテンツ」という。)にアクセスしてダウンロードする利用者が多数いることによって、アップロード者が多額の広告収入を得られることに繋がるなど、利用者の存在がアップロードを助長している面があるとの指摘もなされていた。しかし、現在の著作権法上は、違法にアップロードされたことを知りながら侵害コンテンツをダウンロードする行為が違法とされているのは音楽・映像についてのみであり、その他の著作物については、私的使用目的で行われる限りにおいては、かかる行為は違法とされていなかった(著作権法30条1項参照)。

 このような背景を踏まえ、本年3月10日、インターネット上の海賊版対策の強化等を内容とする著作権法改正法案(以下「改正法案」という。)が閣議決定された。

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(とみた・ゆうすけ)

岩田合同法律事務所パートナー。2010年弁護士登録。2014年10月から2016年9月まで三井住友信託銀行株式会社勤務。争訟解決業務、金融機関関連業務、株主総会関連を含めたジェネラルコーポレート、競争法関連業務等を手掛ける。『Q&A 家事事件と銀行実務』(共著、日本加除出版、2013年)、『Q&Aインターネットバンキング』(共著 金融財政事情研究会 2014年)、『業種別ビジネス契約書作成マニュアル』(日本加除出版、2015年)等著作・論文多数。

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