◆SH3018◆東証、上場子会社のガバナンスの向上等に関する上場制度の整備に係る有価証券上場規程等の一部改正 柏木健佑(2020/02/20)
東証、上場子会社のガバナンスの向上等に関する
上場制度の整備に係る有価証券上場規程等の一部改正
岩田合同法律事務所
弁護士 柏 木 健 佑
1 上場子会社のガバナンスを巡る動向
2020年2月5日、東京証券取引所は、有価証券上場規程等の一部改正を行うことを公表した。当該改正の趣旨は、上場子会社における独立した意思決定を確保し、少数株主の利益を保護することにあるとされている。
上場子会社のガバナンスを巡っては、2019年6月21日に閣議決定された「成長戦略実行計画」において、新たに指針を策定して親会社に説明責任を求めるとともに、子会社側には、支配株主から独立性がある社外取締役の比率を高めるといった対応を促すとの方針が打ち出されていた。これを受けて、経済産業省は、2019年6月28日にグループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(グループ・ガバナンス・ガイドライン)(以下「GGS実務指針」という。)を策定・公表している[1]。
今回の東京証券取引所による有価証券上場規程等の一部改正は、GGS実務指針における上場子会社のガバナンスに関する指針について、実効性を高める施策として位置付けられる。
2 有価証券上場規程等の主な改正内容
- ⑴ 独立役員の独立性基準の強化
- 有価証券上場規程において、上場会社は、独立役員(一般株主と利益相反の生じるおそれのない社外取締役又は社外監査役)を1名以上確保することが求められている(有価証券上場規程436条の2)。また、コーポレートガバナンス・コードの原則4-8では、独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきとされている。
- 上場子会社においては、親会社と一般株主との間に利益相反リスクがあることを踏まえ、上場子会社としての独立した意思決定を担保するための実効的なガバナンス体制が構築されるべきである(GGS実務指針6.3.1)が、従来の上場制度においては、親会社又は兄弟会社の業務執行者(会社法施行規則2条3項6号。業務執行取締役に加えて使用人も含まれる。)であっても1年以上経過している場合には独立役員の要件を満たすことが可能であった(下図参照)。
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(かしわぎ・けんすけ)
岩田合同法律事務所パートナー。2005年東京大学法学部卒業。2007年弁護士登録。ファイナンス関連業務を中心に多様な企業法務を取り扱う。主な著作・論文として、『CFOのための想定問答集』(共著 旬刊経理情報1344号 2013年)、『アブラハム・プライベートバンク事件などを踏まえた投資助言業務の分析』(共著 旬刊商事法務2019号 2013年)。
岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/
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1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。
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