◆SH3016◆債権法改正後の民法の未来77 詐害行為取消権における事実上の優先弁済の否定の規律(3) 赫 高規(2020/02/20)

債権法改正後の民法の未来 77
詐害行為取消権における事実上の優先弁済の否定の規律(3)

関西法律特許事務所

弁護士 赫   高 規

 

5 改正民法下における事実上の優先弁済

(2) 改正民法のもとで事実上の優先弁済が生じる場合について

 5(1)のとおり、424条の9第1項前段ないし同条2項に基づく取消債権者からの請求を受けて、受益者等が取消債権者に対して金銭の支払をした場合に、取消債権者は、債務者に対して、不当利得としてその金銭の返還債務を負うものと解されるが、取消債権者は、当該返還債務と被保全債権を、原則として相殺することができるものと解される。すなわち取消債権者は、改正民法のもとでは、債務者に対する相殺の意思表示をすることによって、被保全債権を事実上優先的に回収することができるのである(改正前民法の判例法理上は、相殺の意思表示を要せずに事実上、受領した金銭を被保全債権の弁済に充当できるものと解されることについて、参照。相殺の要否の点で改正前後の取扱が異なることになる。したがって改正民法のもとでは、例えば、受益者等から直接支払を受けた取消債権者が債務者に対する相殺の意思表示をしないでいる間に、債務者が、取消債権者に対して別口の債務を負担している第三者に、取消債権者に対する返還請求権を譲渡し、当該第三者が、当該債務と譲受債権を先に相殺したときは、取消債権者は、結局、被保全債権の回収手段を失うことになる。)。

 もっとも、のとおり、法制審部会の審議において事実上の優先弁済を否定する規律を設けることを見送るにあたり、相殺権濫用の法理により相殺が制限される可能性について言及されたことは留意を要するところである。特に弁済の取消しの場面については、法制審部会資料において個別事案で濫用とされうる場面として明示的に言及されていること、いわゆる早い者負け・遅い者勝ちが不公平であることは明らかであることから、当該場面における相殺権の行使は原則として濫用に当たるとの解釈論が今後展開される可能性もないではないように思われる。

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(てらし・こうき)

弁護士法人関西法律特許事務所(http://www.kansai-lp.com/)

京都大学法学部卒業、同大学院法学研究科修士課程修了、大阪弁護士会(平成12年登録)、京都大学法科大学院特別教授(平成30年~)、大阪市立大学法科大学院非常勤講師(平成26年~)、上場会社業務執行取締役・社外取締役等

共著書として『倒産法実務大系』(民事法研究会、2018)、『Before/After 民法改正』(弘文堂、2017)、『実務解説 改正債権法』(弘文堂、2017)、『実務解説 民法改正』(民事法研究会、2017)、『会社分割の理論・実務と書式〔第6版〕』(民事法研究会、2013)ほか




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