◆SH3004◆経済産業省、株式会社資生堂の「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2019」経済産業大臣賞の受賞を公表 伊藤広樹(2020/02/13)
経済産業省、株式会社資生堂の「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・
イヤー2019」経済産業大臣賞の受賞を公表
岩田合同法律事務所
弁護士 伊 藤 広 樹
経済産業省は、2020年1月30日、株式会社資生堂(以下「資生堂」という。)が「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2019」経済産業大臣賞を受賞したことを公表した。
「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー」とは、一般社団法人日本取締役協会が主催する、コーポレートガバナンスを用いて中長期的に健全な成長を遂げている企業を応援する企業表彰であるが、その中には、ガバナンスの根幹である社長・CEOの指名・後継者計画(サクセッションプラン)について、独立した指名委員会を中心とした実効的な監督を行い、成果を上げていると認められる企業を表彰する経済産業大臣賞が設けられている。
上記のとおり、「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2019」の経済産業大臣賞は、資生堂が受賞したとされているが、本稿では、その選定理由を概観するとともに、そのポイントを解説する。
【選定理由①】 業務執行体制からの独立性を重視して、社外役員のみで社長の評価を行う部会を設置し、同部会が役員指名諮問委員会とともに社長の指名・後継者計画に関わっている。さらに、その旨をコーポレートガバナンス報告書、統合報告書等において開示しているなど、社長の指名・後継者計画に関するガバナンスの体制が適切に構築され、プロセスの透明性及び客観性が高い。 |
近時、任意の指名委員会を導入する会社は徐々に増えているが、その委員が社外役員のみで構成されている例は少ない。実際に、資生堂の役員指名諮問委員会も、社内役員1名、社外役員3名で構成されているが、同社では、社長の評価を行う「評価部会」を社外役員のみで構成することにより、社長の評価に関する客観性をより担保することを意図していると考えられる。一般論として、経営トップである社長について、社長自らを含む社内役員が適正に評価できるかは疑義があると言わざるを得ず、その意味で、同社の取組みは、社長の評価に関する適正性をより担保するものであると言える。
役員の指名については、客観性を担保する観点からは社外者の関与が重要である一方で、会社の事業・組織・制度・企業風土等に精通した社内者が果たす役割も否定できない。そのような状況の下、資生堂は、取締役会に対して役員人事等に関する答申を行う役員指名諮問委員会には、社内役員をその委員に含めつつ、他方で、経営トップである社長については、社外者のみで構成される「評価部会」が評価することとしている点で、バランスの取れた設計を志向していると言える。
なお、このような役員の指名の場面で社外役員の果たすべき役割は極めて重要であり、企業経営者やコーポレートガバナンスに精通した専門家が社外役員として関与することが望ましいと考えられる。
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(いとう・ひろき)
岩田合同法律事務所弁護士。2004年早稲田大学法学部卒業。2006年早稲田大学法科大学院修了。2007年弁護士登録。主にM&A取引、会社法を始めとするコーポレート分野に関するアドバイスを行う。著作には、『会社法実務解説』(共著 有斐閣 2011)、「新商事判例便覧」旬刊商事法務2031号~(共著 商事法務 2014~(連載))等。
岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/
<事務所概要>
1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。
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