◆SH2987◆企業法務フロンティア「プロスポーツクラブの買収手続――JリーグとBリーグを例に」 野宮 拓(2020/01/29)

企業法務フロンティア
プロスポーツクラブの買収手続

JリーグとBリーグを例に

日比谷パーク法律事務所

弁護士 野 宮   拓

 

1 はじめに

 2017年12月、DeNAがプロバスケットボールBリーグの川崎ブレイブサンダースを買収することが、2018年4月、RIZAPグループがJリーグの湘南ベルマーレの経営権を取得することが、同年10月にはサイバーエージェントがFC町田ゼルビアを買収することが、2019年4月にはミクシィがBリーグの千葉ジェッツを買収することが、そして、同年7月には、メルカリがJリーグの鹿島アントラーズを買収することがそれぞれ発表された。消費がモノからコトに移っているといわれる中で、ライブエンターテイメントであるスポーツの価値が再認識されている結果であると同時に、ESGを重視する社会的潮流も影響しているものと思われる。すなわち、JクラブもBクラブも「地域密着」を謳っており、東京一極集中で過疎化が進む地方社会にあって、JクラブあるいはBクラブへの投資を通じて、地域社会への貢献が見込まれ、そのことに価値を見出す企業が増加しているとも言える。今後このような動きはますます加速することが見込まれる。

 しかしながら、JクラブやBクラブの買収手続には一般企業の買収手続と異なる特別な手続・留意点があることはあまり知られていない。当職は、Jリーグの法務委員長及びBリーグの法務委員長を務めていることから、JクラブやBクラブを買収するにあたって、JリーグやBリーグとの関係でどのような手続が必要とされるのかについて解説し、今後、買収を検討する企業の参考にしていただきたいと思う。以下、①株式取得に関する理事会承認、②クロスオーナーシップの禁止、③会員資格による制限について解説する。

 

2 株式取得に関する理事会決議

 まず、Jクラブ、Bクラブ及びその役員は、他クラブの株式の保有が一切禁止されている(Jリーグ規約25条4項、26条1項、Bリーグ規約26条4項、27条1項)。Bクラブ役員は、他クラブの親会社の5%以上の株式を保有することも禁止されている(Bリーグ規約27条1項)。

 また、JリーグもBリーグも、クラブが株式を新規発行する場合又は既発行の株式の譲渡が行われる場合、リーグに対して事前に届けなければならない旨定める(Jリーグ規約25条、Bリーグ規約26条)。

 そして、Jクラブの場合には、新たに総議決権の15%以上、3分の1超、過半数を取得する株主が出現するような取引が行われる場合には、Jリーグの理事会の事前承認が必要とされる(Jリーグ規約25条。なお、Jリーグの場合は、2020年シーズンからは、Jクラブの親会社は日本法人でなければならない旨の規制が撤廃され、外国法人が直接Jクラブの親会社になることができるようになった(従前は、外資系企業は中間法人として日本法人を設立し、その日本法人がJクラブの株式を保有する必要があった))。

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(のみや・たく)

日比谷パーク法律事務所 弁護士(パートナー)。1998年早稲田大学法学部卒業、2000年弁護士登録、三井安田法律事務所入所、2004年日比谷パーク法律事務所入所、2006年米国ペンシルバニア大学ロースクール修士課程(LL.M.)修了、2007年ニューヨーク州弁護士登録。
・公益社団法人日本プロサッカーリーグ法務委員会委員長
・公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ法務委員会委員長
・カブドットコム証券株式会社 社外取締役
・株式会社鉄人化計画 社外取締役

日比谷パーク法律事務所 http://www.hibiyapark.net/

所属する弁護士がそれぞれコーポレートガバナンス等の会社法、M&A、特許法・著作権法等の知的財産権法、ファイナンス法、スポーツ法、システム開発を含むデジタル法、紛争処理などの得意分野に精通し、各分野のトップランナーとして「少数精鋭」と呼ばれるにふさわしいリーガル・サービスを提供するブティック型ファーム。

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