◆SH2877◆厚労省、パワハラ防止措置に関する指針の素案を公表 冨田雄介(2019/11/08)

厚労省、パワハラ防止措置に関する指針の素案を公表

岩田合同法律事務所

弁護士 冨 田 雄 介

 

 本年6月、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律を改正する法律(以下「パワハラ防止法」という。)が公布された。パワハラ防止法では、事業者に対し、①優越的な関係を背景とした、②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、③就業環境を害すること、の防止のために雇用管理上必要な措置(以下「パワハラ防止措置」という。)を講じることを義務付けており、上記①から③を満たす事象をいわゆるパワーハラスメントとして防止措置の対象としている。なお、現時点では、パワハラ防止法は来年6月1日に施行されることが予定されているが、中小事業主については、令和4年3月31日(予定)まではパワハラ防止措置を講じる義務を努力義務にとどめる旨の経過措置が設けられている。

 厚労省は、本年10月21日、パワハラ防止措置等に関する指針(以下「指針」という。)の素案(以下「素案」という。)を労働政策審議会に示した。

 素案では、パワハラの定義の解釈や事例が示されるとともに、パワハラ防止措置の具体的内容が示されている。

 まず、パワハラの定義に関しては、上記①について、「当該事業主の業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける労働者が行為者に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるもの」との解釈が示されている。

 上記②については、「社会通念に照らし、当該言動が明らかに当該事業主の必要性がない、又はその態様が相当でないもの」との解釈が示されるとともに、「個別の事案における労働者の行動が問題となる場合は、その内容・程度とそれに対する指導の態様等の相対的な関係が重要な要素となる」との見解が示されている。

 上記③については、「当該言動により労働者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること」との解釈が示されるととともに、その判断に当たっては「平均的な労働者の感じ方」を基準とすることが適当との見解が示されている。

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(とみた・ゆうすけ)

岩田合同法律事務所パートナー。2010年弁護士登録。2014年10月から2016年9月まで三井住友信託銀行株式会社勤務。争訟解決業務、金融機関関連業務、株主総会関連を含めたジェネラルコーポレート、競争法関連業務等を手掛ける。『Q&A 家事事件と銀行実務』(共著、日本加除出版、2013年)、『Q&Aインターネットバンキング』(共著 金融財政事情研究会 2014年)、『業種別ビジネス契約書作成マニュアル』(日本加除出版、2015年)等著作・論文多数。

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