◆SH2855◆企業法務フロンティア「競技場での撮影動画のネットでの投稿」 原 秋彦(2019/10/29)

企業法務フロンティア
競技場での撮影動画のネットでの投稿

日比谷パーク法律事務所

弁護士 原   秋 彦

 

1. IOCの新たな入場券購入規約

 2020年東京オリンピックの入場券購入規約が波紋を拡げている。同規約の第33条によれば、入場者が競技会場内で撮影した静止画や動画についての著作権は自動的且つ包括的にIOCに譲渡移転される扱いとなり、撮影者はIOCの事前の許可なしには撮影した動画をインターネットに投稿・配信することが禁じられているからだ。

2. 従来の撮影規制手法

2.1 施設管理権者としての規制

 従来も、例えば寺社仏閣での仏像や収蔵品については撮影を禁じるということは普通に行われており、そうすることによって寺院や神社はその絵葉書や収蔵品カタログの売り上げを確保するという手法を取ってきている。だが、対象である古い時代の仏像や収蔵品にはもはや著作権が存在しているはずもないから、施設の所有者や占有者としての排他的な「施設管理権者」として入場者の振る舞いを管理していることになる。実際の小さな入場券にはこと細かい禁止事項が印刷されているわけではなく、随所に「建物内撮影厳禁」といった立て札や掲示板で管理しているのが通常であろう。

2.2 実演家の著作隣接権の保護を根拠とする主催者による規制

 これに対して、コンサート会場では、アーチストという実演家の著作権法上の著作隣接権(実演の録音権・録画権等)を保護するために、その侵害を警告するという意味合いで録画・録音を禁止するという性格が濃厚である。寡聞にして、スポーツのアスリートによる競技パフォーマンスが著作権法上の実演家の実演として保護されるべきだとの議論には接したことがない。

2.3 入場券購入時の契約手法による規制

 場合によっては、コンサート入場券の裏面にそうした禁止事項を明記する例もあるようだが、入場券購入時にそうした裏面記載事項に同意した上で入場券を購入しているという契約的な理論構成には多少の無理もあり、商慣習としての規制と上述の施設管理権者としての規制権限の行使との合わせ技とみるのが妥当であろう。

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(はら・あきひこ)

佐賀県生まれ。1978年東大法学部卒。1980年弁護士登録(第二東京弁護士会)。1984年米国コロンビア・ロースクール修士号取得。1985年ニューヨーク州弁護士登録。現在日比谷パーク法律事務所パートナー弁護士。2002年FIFAワールドカップの日本招致委員会及び組織委員会の法律顧問、日本サッカー協会監査コンプライアンス委員長を務めたほか、現在、スイス国ローザンヌのスポーツ仲裁裁判所(CAS)仲裁人等を務める。『ビジネス契約書の起案・検討のしかた』、『ビジネス法務基本用語和英辞典』、『ビジネス法務英文用語集』、『法律実務家が知っておきたい作法』(以上、商事法務)。

日比谷パーク法律事務所 http://www.hibiyapark.net/
所属する弁護士がそれぞれコーポレートガバナンス等の会社法、M&A、特許法・著作権法等の知的財産権法、ファイナンス法、スポーツ法、システム開発を含むデジタル法、紛争処理などの得意分野に精通し、各分野のトップランナーとして「少数精鋭」と呼ばれるにふさわしいリーガル・サービスを提供するブティック型ファーム。

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