◆SH2851◆国際シンポジウム:テクノロジーの進化とリーガルイノベーション「第3部 検討すべき課題、求められる人材育成とは?①」(2019/10/28)

国際シンポジウム:テクノロジーの進化とリーガルイノベーション
第3部 検討すべき課題、求められる人材育成とは?①

パネリスト

ケンブリッジ大学法学部教授 Simon Deakin

ケンブリッジ大学法学部教授 Felix Steffek

学習院大学法学部教授 小塚荘一郎

一橋大学大学院経営管理研究科准教授 野間幹晴

産業技術総合研究所人間拡張研究センター     
共創場デザイン研究チーム長 小島一浩
 

ファシリテーター

一橋大学大学院法学研究科教授 角田美穂子

電気通信大学大学院情報理工学研究科准教授 工藤俊亮

株式会社レア共同代表 大本 綾

 

 

  1. ● このシンポジウムの第1部および第3部の講演については、NBL(1150号1153号1155号)に掲載された「国際シンポジウム テクノロジーの進化とリーガルイノベーション」をご覧ください。

 

第3部 検討すべき課題、求められる人材育成とは?①

大場:
 第3部では、第2部の「噛み合わない議論」――わりと噛み合ったような気もしていましたが――を踏まえて、朝にお話ししました三段階のプロセス、すなわち第一段階で社会の中から課題を見つけだす、第二段階で社会の課題を技術などで解決する、第三段階でその技術を社会の中に入れていく、というプロセスに向かっていく人というのはどういう資質でどういう行動が求められるのか、またそのような人材というのはどのようにして育成できるのかというところに議論を進めていきたいと思います。

角田:
 それでは残りの時間、最後のパネルディスカッションをしていこうと思います。第3部になって、人材育成の観点から、これからイノベーションを起こし続けていくためにどうしたらいいのかについて議論していただいたのですが、講演なさった先生方にはまだ言い足りないこともあろうかと思います。
 Deakin先生のお話で法とテクノロジーのサイクル論の話があり、共に進化していくという話がありましたが、Steffek先生のご講演では、大学も進化していくべきだというお話が出ました。大学に関係する者としては、テクノロジーに関係する分野で活躍できる法律家を育てるという課題に早急に取り組んでいきたいところです。そこで、Steffek先生、どのようなことがイギリスで検討されているのかについて、もう少し補足していただけますでしょうか。

 

● 法×テクノロジーの持続可能な協力関係の条件:正当な評価と報酬のシステムを

Steffek:
 ありがとうございます。イギリス政府は大学がテクノロジーと法の分野に関わることを促進していると思います。大学が定期的に一堂に会して意見交換を行う場を提供したり、テクノロジーを創出している現場に招くこともあります。政府としては、各大学が単独でやるよりも大学がそういった場で協力関係を築いていくことに関心を寄せているからでしょう。イギリス政府はまた、事務弁護士会(Law Society)のイニシアティブ、Law×Tech デリバリー・パネルをサポートしています。そこにはいくつかタスクフォースがあるのですが、その内の一つにLaw×Tech教育タスクフォースがあります。1年前に設置されたもので、そこではどのようことが教育で行えるのかを検討しており、私もメンバーとして参加しています。
 私自身の経験から付け加えるとすれば、おそらく課題となるのは、学際的な教育をいかにして実現するかということだと思います。特にコンピューティングの専門家と協力して一緒にやっていくには、共通の問題関心というものを見出さなければいけません。もちろん、基本的には皆さんフレンドリーで、ご一緒すればハッピーな人たちは多いです。ですが、われわれ法律家にとって必要なのは、本気で問題関心をもってくれる人なのです。もちろん、アカデミアにとっては、報酬(reward)システムをどう構築するかも大事な問題だと思います。つまり、コンピューティング専門家のコミュニティで、法とテクノロジーの分野の発展への貢献が正当に評価され、報酬を得られる、そういったスキームが必要でしょう。持続可能な形で協力関係を築いていくには、協力関係に意義を見出せるようにする必要がありますが、そういった本気で問題関心をもってもらえるかどうかは、本当に難しい問題(Challenge)だと思います。
 そしてもちろん、大学は人々が一堂に会する場を提供することも重要です。もちろん、学生にそのような場を提供するのもひとつありますが、アカデミアの側もやはり問題関心や問題意識、そして意見を持つべきだと思いますし、またテクノロジーは研究のやり方自体を変えていくということもあるでしょう。もしかしたら、なかには変化に対して消極的な人もいるかもしれませんし、変化を歓迎する人もいるかもしれませんが、大事なことは、法学部のなかでコンセンサスを形成することだと思います。ミーティング等をもって共通の問題関心を探し、先に進めていくというプロセスを履むことが必要だと思います。そのプロセスに時間が思った以上にかかることもあるでしょう。できれば早くに進んでいけばと思いますが、より良い関係を築き、そしてそれを先に進めていくためには、やはりそのスタートのところできちんとコンセンサスを得るというのが大事で、それには時間がかかっても仕方がないと思います。ただ、前にも申し上げましたように、テクノロジーと法、そしてまた法律を教えるという、その教える者も、やはり人間ですので、その人たちの参加というのも必要だと思います。

角田:
 ありがとうございました。
 続いて小島さんにも、プレゼンテーションの補足をお願いします。

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