◆SH2843◆国際シンポジウム:テクノロジーの進化とリーガルイノベーション「第2部 テクノロジーの進化に対する工学×経営学×法学のアプローチ③」(2019/10/24)

国際シンポジウム:テクノロジーの進化とリーガルイノベーション
第2部 テクノロジーの進化に対する工学×経営学×法学のアプローチ③

パネリスト

ケンブリッジ大学法学部教授 Simon Deakin

ケンブリッジ大学法学部教授 Felix Steffek

学習院大学法学部教授 小塚荘一郎

産業技術総合研究所人間拡張研究センター生活機能ロボティックス研究チーム主任研究員 梶谷 勇

一橋大学大学院経営管理研究科准教授 野間幹晴
 

ファシリテーター

一橋大学大学院法学研究科教授 角田美穂子

電気通信大学大学院情報理工学研究科准教授 工藤俊亮

株式会社レア共同代表 大本 綾

 

 

  1. ● このシンポジウムの第1部および第3部の講演については、NBL(1150号1153号1155号)に掲載された「国際シンポジウム テクノロジーの進化とリーガルイノベーション」をご覧ください。

 

第2部 テクノロジーの進化に対する工学×経営学×法学のアプローチ③

● ビジネスの立場から

角田:
 お待たせしました。ここでもう一人、ご登壇いただいている野間先生はビジネスの先生であられますので、ビジネスの観点からご発言をいただければと思います。レッドフラッグアクトに関するコメントがあれば、それについてもひと言いただけると幸いです。

野間:
 はい。ご紹介に預かりました一橋大学の野間と申します。
 まず、私の研究・教育活動について説明いたします。私は一橋ビジネススクール、つまり経営管理研究科の准教授として教鞭を執ると同時に、18年4月から一橋大学大学院フィンテック研究フォーラムの代表を仰せつかっています。フィンテック研究フォーラムは、フィンテックに関心のある金融機関と事業会社を合計20社集めて、産と学がフィンテックについて研究を行うフォーラムです。また、デジタルイノベーションに対して日本企業が遅れていることに危機感を持った経産省が音頭をとって、今年度からデジタルトランスフォーメーションの人材育成プログラムが開始されました。デジタルトランスフォーメーションのプログラムには30社から1名ずつが参加しており、私はこのプログラムのコア・ファカルティーを務めています。
 我々パネリストの間である程度、事前に議論していますが、角田先生から自由に発言していいと許可を得ているので自由な発言をしたいと思います。普段、日本企業のデジタルトランスフォーメーションへ向けた取り組み、あるいは既存の金融機関やフィンテック企業の相談を受けていて、これまでの議論でずれているなと思う点が一点ございます。それは、先ほど小塚先生がおっしゃった、何か問題が起きてから法律を作ればいいという点です。
 問題提起したいと思います。皆さん、エスカレーターに乗る時、左と右、どちらに立ちますか。どちらに立つかを規定する法律はありますか。自動車は、日本だと道路交通法の第17条第4項で左側通行と決まっています。そして人は右側通行しろと、同じく道路交通法の第10条第1項で決まっています。法律で決められています。ただ、エスカレーターの場合、東京だと急ぐ人は右側を登ります。左側に立った人は静止しています。大阪では左右が逆転します。これについて、法律はありません。なぜイノベーションが発生しにくいかというと、法律が決まっていないので、例えば「自動車はどっちを通るべきか法律でまず決めてくれ」となるわけです。ただ、法的な論点はこれだけではなく、法律が決めるべきことと、ここから先は法律が決めることではないこととの線引きが不明確だと私は考えています。エスカレーターで急ぐ人は右側に乗れというルールはありません。日本では1914年の東京大正博覧会の際に初めてエスカレーターが導入されたそうですが、当初はレッドフラッグとまったく同じように、エスカレーターガールがいたそうです。エレベーターガールではなく、エスカレーターガール。乗るところに女性が立っていて、利用者に対して注意を促していました。今は、エスカレーターガールはいません。ソフトローとハードローということかも知れませんが、法律が決めるべき問題についてちゃんと法律化して欲しいという思いがある一方、どこからが法律ではなく慣習で決めるべき部分なのかという線引きが、企業側にはわからないのではないかと私は考えています。先ほどの梶谷先生の議論をより整理すると、法律で決める部分と法律で決めなくていい部分の線引き、特に後者の方が大きな論点なのではないでしょうか。例えば、今月、フィンテック研究フォーラムの企業と一緒に中国に行って、アリペイ、アリババの子会社のアントフィナンシャルを視察しました。アントフィナンシャルに芝麻(ごま)信用というのがあります。芝麻信用というのは個人の履歴を集めて色々な信用情報を測定するのですが、そこでは過去の犯罪履歴なども全部集めます。先ほどの自動車の例というのは、安全性に関する論点、安全性について、どこまでどういう法律を作るのか、誰が責任を取るのかという論点でした。同じく、個人情報に関しても、どこまで集めてよいのか、誰がどのように集めるのが適当かといった点について法律的な議論が必要です。ただし、法律でどのようなルールを定めるのかという論点があると同時に、どこから先を明確に-明確になるのかどうかすらわかりませんが-法律が立ち入らない分野とするのかという論点があるはずです。特にイノベーションを興す上でその2つが重要な論点だと私は考えています。

角田:
 どなたか発言されたい方が、むずむずしていらっしゃる方がいると思うのですが、ではSteffek先生、お願いします。

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